私は現役の教習所指導員として、20年以上にわたりバイクの指導に携わっています。 これまで3回にわたり、バイクに乗るべき理由、弱点、そして車両特性について解説してきました。
- 第1弾:指導員が語る、あなたが今すぐ「バイクの免許」を取るべき10の理由
- 第2弾:【現役指導員が警告】免許を取る前に絶対に知っておくべき、バイク「10の弱点」と命を守る心得
- 第3弾:事故を回避する!バイク乗りが絶対に押さえておくべき「車両特性」のすべて
バイクは、車の運転に比べて「加害者になるリスクが圧倒的に低い」という素晴らしいメリットがあります。しかし一方で、事故を起こせば生身の体が放り出され、ただでは済まない乗り物です。
実は私自身、過去に他車にぶつけられて骨折するという事故を経験しています。幸い命に別状はありませんでしたが、もし今の私があの時に戻れるなら、あの事故は確実に回避できていたと断言できます。 なぜなら、今の私と当時の私とでは**「マインドセット(心の持ち方)」**が全く違うからです。
技術や知識を身につけた上で、最後にあなたの命を救うのは「考え方」です。今回は、バイクで死なないための究極の防御壁となる「ライダーの心得」についてお話しします。
大前提にして最重要!「時間に余裕を持つこと」
これから6つの心得をお話ししますが、そのすべての土台となる絶対条件があります。それは**「時間に余裕を持つこと」**です。
どんなに安全意識の高いライダーでも、時間が迫っていれば必ず「急ぎの心理」が生まれます。この「急ぎ」こそが、マインドコントロールを崩壊させ、ライダーの寿命を縮める最大の要因です。 バイクで移動する時は、決してギリギリに出発せず、最低でも30分、できれば1時間以上の余裕を持つようにしてください。これが守れなければ、これからお話しする心得はすべて台無しになります。
命を守るライダーの心得 6箇条
① 道路を走る運転者は全員「ヘタクソ」だと思え
道路を走っているドライバーやライダーは、全員がロボットではなく感情を持つ人間です。つまり、ミス(エラー)が起きて当たり前なのです。 「まさかこんな所で飛び出してこないだろう」「赤信号だから止まるだろう」という期待は捨ててください。全員がヘタクソな運転手だから、急な進路変更や信号無視は「起こり得る当たり前のこと」だと構えておくのです。そうすれば、イレギュラーが起きてもイライラせず、初動の対応が格段に早くなります。横への回避が苦手なバイクだからこそ、「常に危ない車が来る」という前提で流れに乗りましょう。
② 譲り合いの意識を持つ
時間にゆとりがあり、心に余裕があれば、自然と「譲る気持ち」が生まれます。 横断歩道を渡ろうとする歩行者や自転車はもちろん、渋滞で横入りしようとしている車にもスッと道を譲れる寛容さを持ちましょう。譲り合いは、無用なトラブルや接触事故を未然に防ぐ最高の安全策です。
③ 他の車両を「思いやる」気持ち
上手なライダーの根底には、必ず「思いやり」の精神があります。 「自分だけが事故を起こさなければいい」のではなく、「自分の周囲にいるすべての車両や歩行者が事故にならないように配慮しながら走る」のがプロのマインドです。イライラして先を急ぐ運転では、絶対にそんな配慮はできません。他人を思いやることが、結果的に自分自身を守ることに繋がります。
④ 自分とバイクの「限界」を知る
運転中に「ヒヤッ」としたり、心がドキドキしたりした時は、自分かバイクの「限界に近い状態」であるというサインです。 バイクは人車一体の乗り物。それぞれの限界を正しく理解し、常に能力の7〜8割程度に抑えて走る余裕が必要です。心拍数、速度、道路環境など、あらゆる情報を総合して、限界を超えないようコントロールする経験値を積みましょう。
⑤ ルールを知り、違反しない
「知らなかった」で命を落とすのが道路の世界です。 道路交通法がなぜ定められているのか、それを犯すとどんな致命的なデメリットがあるのかを深く理解してください。意図的なルール違反は論外ですが、無知もまた罪です。正しい知識を持ち、ルールを遵守することが、自分を守る最強の鎧になります。
⑥ 事前にルートを頭に入れる
最近はスマホナビが便利ですが、知らない道で画面ばかりを注視する「ながら運転」は自殺行為です。 死にたくないのであれば、出発前に必ずルートをチェックし、頭の中に大まかな地図と曲がるポイントを思い描いてから走り出してください。ナビはあくまで音声などの「補助」として使い、視線は常に前方の危険予測に向けましょう。
まとめ:日常風景に危険を想定する「自然な警戒」
以上のマインドセットを当たり前のものとして身につければ、あなたが道路で危ない目に遭う確率は激減します。ただなんとなく乗るのではなく、ライダーとしての心得を重視した運転に切り替えてみてください。
唯一どうしようもない脅威があるとすれば、後方からのノーブレーキの追突や、信号無視の直進車による「完全なもらい事故」です。 私はそんな車も必ずいると思っているので、信号待ちの時は必ずミラーで後方を確認し、「もし対向車が突っ込んできたら、あのボンネットに飛び乗ろう」といったシミュレーションを無意識に行っています。 一見疲れるように思えるかもしれませんが、習慣になれば精神的に疲れることは一切ありません。常に備えるマインドが、安全で快適なバイクライフの絶対条件なのです。
次回は、このマインドセットを活かし、**「道路に潜む危険をどう予測し理解するか」**というテーマで解説します。お楽しみに!

