前回の記事では、昭和の時代に生まれた「一姫二虎三ダンプ」という裏標語を取り上げ、女性ドライバーの運転特性についてお話ししました。まだお読みでない方は、ぜひこちらを先にご覧ください。
【一姫二虎三ダンプ】女性の運転は本当に怖いのか? 現役指導員が語る「男女の運転特性」 https://online-ds.jp/2026/06/07/gender-differences-in-driving-and-accidents/
かつて道路上で恐れられていた「交通三悪(1位:女性、2位:酔っ払い、3位:ダンプカー)」。では、時代が大きく変わった現代において、この「三悪」はどうなったのでしょうか。そして、今の日本の道路を脅かす「令和の新・交通三悪」とは一体何なのか。 今回は、日々現場でドライバーの運転を見ている指導員の視点から、批判覚悟でバッサリと斬り込んでいきたいと思います。
昭和の「交通三悪」は今どうなった?
かつて恐れられた三悪ですが、現代の道路事情に照らし合わせると、状況は大きく改善(あるいは変化)しています。
- ① 姫(女性ドライバー): 現代では女性ドライバーはごく一般的です。前回の記事でも触れた通り、危険なのは性別ではなく「運転に余裕がないこと」です。猛スピードで走っていたり、道を譲ってくれなかったりするのは、男女問わず個人の問題であり、特別「女性だから危ない」という時代ではありません。
- ② 虎(飲酒運転): 「昔はみんな少しは飲んで乗っていた」という恐ろしい時代もありましたが、度重なる厳罰化により、飲酒運転は社会的に完全にアウトとなりました。ゼロではないものの、かつてのように無法地帯ではなくなり、安全性は飛躍的に高まっています。
- ③ ダンプカー: 土砂を積んで猛スピードで爆走し、周囲に恐怖を与えていたダンプカーも激減しました。現代はコンプライアンスや企業の信用が最重要視される時代です。無謀な運転は元請け会社への多大な迷惑と信用失墜に直結するため、悪質なドライバーはかなり淘汰された印象です。
では、これらに代わる「現代の道路の脅威」は何なのでしょうか?
発表!指導員が選ぶ「令和の交通三悪」
批判覚悟で、はっきり言わせていただきます。私(教習指導員)が現場で見ていて痛感する、令和の時代の交通三悪はこの3つです!
① ながら運転(スマホ・カーナビ)
現代病とも言える最悪の脅威です。紙の地図を使う人が消え、誰もがスマホやカーナビを持つ現代。「電話が鳴ったら出たい」「LINEの通知を見たい」という誘惑に負けるドライバーが後を絶ちません。
これに対し、国もついに本腰を入れて厳罰化に踏み切りました。
- 自動車・原付:2019年(令和元年)12月1日に厳罰化
- 自転車:2024年(令和6年)11月1日に厳罰化
特に自動車の罰則は、「免許が継続できないレベル」の非常に重いものになっています。
1. 交通の危険を生じさせた場合(ながら運転で事故を起こしかける等) 罰則:1年以下の拘禁刑(または懲役)または30万円以下の罰金 違反点数:6点(※一発免停です) 反則金:適用されず、即座に刑事罰の対象となります。
2. 携帯電話使用等(保持)違反(手に持って通話する、画面を注視する等) 罰則:6月以下の拘禁刑(または懲役)または10万円以下の罰金 違反点数:3点 反則金:普通車 18,000円 / 大型車 25,000円 / 二輪車 15,000円 / 原付 12,000円
これほど厳罰化されたにもかかわらず、未だに警察の目を盗んで下を向きながら運転しているドライバーを頻繁に見かけます。厳しい言い方になりますが、こういう人は「本当に痛い目(一発免停や重大事故)に遭わないと治らない」のだと思います。
② 自転車
手軽で便利な自転車ですが、道路交通法上は立派な「軽車両(車の仲間)」です。しかし、無法地帯と化しているのが現状です。
事実として、自転車乗用中の死亡・重傷事故のうち、「約4分の3」に自転車側の法令違反が存在しています。歩行者との事故も急増しており、イヤホンやスマホを見ながらの「ながら運転」、赤信号無視などによる悪質な事故が後を絶ちません。 これまで、悪質な自転車を摘発するには刑事手続きを伴う「赤切符」しかなく、警察の負担も大きいという問題がありました。そこで、ついに2026年4月より、自転車にも実効性のある「青切符制度(反則金)」が導入されました。
これで安全性は高まることが期待されますが、根本的な問題があります。それは「ルールが複雑すぎるのに、誰も教えてくれない」ということです。車の免許を取らない人は、交通ルールを本格的に学ぶ機会がありません。私は、小学生や中学生の「義務教育」の中に、自転車の交通ルール学習を必須として組み込むべきだと強く感じています。
③ 高齢ドライバー
少子高齢化社会において高齢ドライバーの絶対数が増えるのは当然です。しかし、問題は「割合」です。高齢者が第一当事者となる交通事故の中で、死亡事故の発生率は他の年代の「2倍以上」という恐ろしい統計データが出ています。
身体能力や認知機能の衰えから、ペダルの踏み間違いや逆走といった重大事故を引き起こすリスクが高いのは紛れもない事実です。 近年では、75歳以上のドライバーに対する「認知機能検査」や、一定の違反歴がある人への「運転技能検査(実車試験)」が義務化されるなど、免許継続のハードルは格段に高くなりました。もはやルール上、「不安があるなら早く免許を返納してください」と国が言わんばかりの法整備が進んでいます。
まとめ:時代と共に変わる交通課題
私が挙げた「令和の交通三悪(ながら運転・自転車・高齢ドライバー)」。 お気づきの通り、実はこれらすべてに対して、国はすでに「厳罰化」「青切符導入」「検査の厳格化」といった強力な対策を打ち出しています。
時代によって交通事情は常に変化します。平成の時代に社会問題となった「あおり運転」や「横断歩道での歩行者妨害」も、厳罰化と啓発によって確実に改善されてきました。 この令和の三悪も、数年後には対策が実を結び、また新たな問題(次の時代の交通三悪)へと世代交代していくのかもしれません。
次に何が「悪」と呼ばれるようになるかは分かりません。しかし、変わらないのは「ハンドルを握る一人ひとりの責任感」です。時代の変化にただ流されるのではなく、常に安全意識をアップデートできるドライバーでありたいものですね。

