こんにちは。とある指定自動車教習所で、日々ドライバーの皆様の安全教育に携わっている現役の教習指導員です。
[前回の記事]では、運転技能検査の最初の課題「指定速度での走行」について解説しました。メーターを少し意識するだけで確実にクリアできるポイントがお分かりいただけたかと思います。
さて、今回のテーマは、コース内で2回実施される「信号通過」の課題です。
実はこの「信号通過」、少しの判断ミスや普段の運転のクセが原因で、一発不合格にもなり得る恐ろしい減点(-40点)が潜んでいる非常に重要なセクションです。
しかし、採点基準を正しく理解し、ちょっとしたポイントに気をつければ決して怖い課題ではありません。今回は、現場の指導員だからこそ知っているリアルな判定基準や、絶対にやってはいけない注意点について詳しく解説していきます。
1. 信号通過の明確な採点基準(10点減点か40点減点か)
信号機のある交差点を通過する際、最も重要になるのが「赤信号での止まり方」です。
運転技能検査は100点満点からの減点方式で、70点以上が合格となります。つまり、一度に40点の減点を受けてしまうと、その時点で残り60点となり、事実上の不合格が確定してしまいます。
警察庁の実施要領に基づく具体的な採点基準と減点数は以下の通りです。
| 減点数 | 判定(公式名称) | 具体的なミス・状態 |
| 0点(減点なし) | 正常 | ・青信号で安全確認して通過した ・赤信号で停止線の手前に正しく止まった |
| 10点減点 | 信号無視(小) | ・赤信号で停止線は越えたが、横断歩道の手前で止まれた |
| 40点減点 | 信号無視(大) | ・赤信号で停止線を越え、横断歩道や交差点内に進入した ・赤信号をそのまま通過した |
このように、同じ「赤信号で停止線を越えてしまった」というミスでも、横断歩道の手前で踏みとどまれたか、横断歩道まで進入してしまったかで、10点減点(小)と40点減点(大)という天国と地獄ほどの差が生まれます。
2. 一般の免許試験とは違う?「黄色信号」のリアルな評価
ここで、皆様が一番疑問に思うポイントをお話ししましょう。
「黄色信号の時はどうすればいいの?進むの?止まるの?」という問題です。
通常の普通免許を取得する際の技能試験では、「黄出(黄色信号での進入)」や「赤出(赤信号での進入)」という厳しい採点項目が存在し、黄色信号で交差点に入ってしまうと、それだけで試験中止になることもあります。
しかし、75歳以上の運転技能検査では、そこまで厳格な採点ではありません。
基本は「黄色は止まれ」ですが、停止線の直前で急に黄色信号に変わり、急ブレーキをかけないと安全に止まれないようなタイミングであれば、そのまま通過しても不問(減点なし)となります。
実際の道路での警察の取り締まりを見ても、信号の切り替わりの微妙なタイミングで捕まるケースは少なく、実質的に「完全に赤になっているのに突っ込んだか」が評価される場面が多いのと同じです。
運転技能検査の主眼は、「タイミングの粗探し」ではありません。「しっかりと信号の色を見て、状況に応じた安全な判断ができているか」を評価することが目的ですので、黄色信号で無理に急ブレーキを踏んで焦る必要はありません。
3. 【要注意】教習所ごとのコースの違いと「停止線の罠」
さて、ここからが非常に重要なポイントです。
普段の運転で、「停止線を少し踏んで止まるクセ」や「停止線を少し越えて止まるクセ」がある方は、十分に注意してください。
教習所や試験場によって、コースの形状や広さは異なります。ここで知っておいていただきたい裏話として、「停止線から横断歩道までの距離が非常に短いコースがある」という事実です。
先ほどの採点基準を思い出してください。
停止線を越えても横断歩道の手前なら「10点減点(小)」で済みますが、横断歩道に入ってしまうと一発アウトの「40点減点(大)」です。
もし、停止線から横断歩道までの距離が短い教習所で受検した場合、「少し停止線を越えて止まった」つもりが、直ちに横断歩道に差し掛かってしまい、一瞬にして40点減点(大)になってしまうリスクが極めて高いのです。
日常の運転行動のクセは、緊張する検査本番で必ず顔を出します。停止線を踏んで止まるのが当たり前になっている方は、今すぐ「停止線の手前でピタリと止まる」意識づけを行ってください。
4. 「手前すぎる停止」は減点される?
反対に、「停止線を越えるのが怖いから、うんと手前で止まろう」と考える方もいらっしゃるでしょう。
実際の道路では、交差点を左折・右折してくる大型バスやトラックが曲がりやすいように、あえて停止線のずいぶん手前で止まる「親切心」での行動もよく見かけます。
そのため、運転技能検査においても、停止線より手前すぎる位置で止まることに関しては、全くの不問(減点なし)となっています。
ただし、停止線より2メートル以上手前で止まってしまった場合は、検査員から「もう少し前です。停止線まで進んでください」という声掛け(指示)が出ます。この指示に従って、ゆっくり前進すれば減点にはなりません。
【ここで注意!】
指示を受けてゆっくり前進する際、「停止線まで行かなければ!」と焦ってしまい、勢い余って停止線を越えてしまうと、先ほど説明した「10点減点(小)」や「40点減点(大)」の対象になってしまいます。
やり直しの前進をする時こそ、最も慎重にペダル操作を行い、絶対に停止線を越えないように注意してください。
まとめ
今回は、一発不合格のリスクが潜む「信号通過」の課題について解説しました。
- 赤信号で横断歩道に入ると即40点減点(事実上の不合格)
- 黄色信号は、安全に止まれない場合は通過してもOK
- コースによっては停止線と横断歩道が近く、少しのオーバーが致命傷になる
- 手前すぎる停止は減点されないが、やり直しの前進で線を越えないよう注意
信号通過の課題をクリアするためのコツは、たった一つ。「ゆとりを持って、停止線の手前で確実に止まること」です。
普段からご自身の車を運転する際、信号のある交差点では「停止線の手前」を意識してブレーキを踏む練習をしておきましょう。
次回は、これも多くの方が苦手とする「一時停止」の課題について解説します。信号とはまた違う、一時停止ならではの注意点や採点基準がありますので、お楽しみに!

