いよいよ2026年4月より、準中型免許・中型免許(中型二種含む)に「AT限定」が新設されました。
これまで、これらのサイズのトラックやバスを運転するには原則としてMT(マニュアル)免許が必要でしたが、今回の法改正によりオートマ車限定で免許が取れるようになったのです。 「部活の遠征でマイクロバスを運転したい」「引っ越しの手伝いで少し大きめのレンタカートラックを借りたい」「定年後に幼稚園バスの運転手をしたい」といった、かなり限定的だけれど確実にあるニーズにとっては、非常に嬉しいニュースですよね。
「それなら早速、教習所に行ってAT限定で免許を取ろう!」
……と思った皆さん、ちょっと待ってください。実は今、全国の教習所の現場では**「法律はできたのに、教習所に行ってもAT限定が取れない」**という異常事態が起きています。 今回は、新設された免許のちょっと複雑なルールと、教習所業界が抱える「ヤバい裏事情」について、現役指導員がぶっちゃけて解説します。
複雑すぎる?AT免許を取得した後の「運転できる車のルール」
まずは、新設された「AT限定」の準中型・中型・中型二種免許を取得するとどうなるのかを整理しましょう。当然ですが、それぞれのサイズ・重さに対応した車を「オートマチック限定」で運転できるようになります。
しかし、ここで非常にややこしい**「既存のMT免許とのねじれ現象」**が発生します。日本の法律の少し不思議なカラクリを分かりやすく解説しますね。
【例:中型二種のAT免許を取る場合】 もしあなたが、すでに**「普通二種のMT免許」を持っているとします。 この状態で今回新設された「中型二種AT」の教習所に入校した場合、教習自体はすべてAT車で楽に練習を行うことができます。 しかし、ベースとして普通車のMT免許を持っているため、卒業して免許証が交付されると、なんと「中型二種のMT車も運転できるようになる(免許の条件がMTになる)」**のです。
「えっ、じゃあ普通二種のMTを持っていない人はどうなるの?」と思いますよね。 その場合は、まず教習所で「中型二種AT」を取得します。その後、普通車(小さい車)を使って**「普通二種AT限定解除(MTに乗れるようにする審査)」**を行えば、それだけで大きな中型二種でもMT車が運転できるようになってしまうのです。
少し頭が混乱しそうですが、要するに「ベースとなる免許でMTの資格を持っていれば、上のクラスをATで練習してもMTに乗れるようになる」という裏ワザのような法律になっているのです。
教習所の実態:練習する「AT車」がない!?
「なるほど!じゃあ教習は全部AT車で楽にできるんだね!」と思った方。ここからが本題です。
実は、当面の間は**「これまで通りのMT車で教習を実施する教習所」**がほとんどになります。 理由は非常にシンプルです。教習所に、教習用のAT車がないからです。
「法律が施行されたのに車がないってどういうこと?」と思われるかもしれませんが、現在、教習車用のATトラックやバスの生産が全く追いついておらず、全国の教習所が買いたくても買えない状態に陥っています。 一部の教習所では、既存のマイクロバスなどを改造して補助ブレーキを付け、急拵えでAT教習車を作って対応を始めるかもしれませんが、全国の教習所で当たり前のようにAT教習が受けられるようになるには、まだまだ時間がかかるというのが実態です。
暴露:なぜそんなに車がないのか?
メーカーの生産が追いついていないのも事実ですが、実はもう一つ、業界内でまことしやかに囁かれている最大の理由があります。
それは、**「全国の運転免許試験場が、AT教習車を一気に買い占めたから」**です。
運転免許試験場というのは、各都道府県の警察が管轄する施設です。もし「新しい法律を作ったのに、試験場でATの試験ができません」となってしまえば、警察のメンツは丸潰れですよね。「なんのための法律だよ!」と国民から大バッシングを受けてしまいます。 そうならないよう、警察関係の施設が真っ先に車両を手配して確保に動いたと言われています。
法律というのは、警察庁が机上で作ったものを全国の警察関係に下ろし、そこから民間である私たち教習所に降りてくるという順番(トップダウン)です。全国の警察組織が優先して車を買い占めれば、末端の教習所に回ってくるわけがありませんよね。
まとめ:現場を置き去りにした法改正への疑問
これから準中型や中型の免許取得を考えている方へ。 「AT限定で取りたい!」と思っても、しばらくの間は受け入れている教習所を見つけるのが難しく、結局は**「これまで通りMT車で取るルート」**が主流になるでしょう。
そして恐ろしいことに、このAT車不足が解消する前に、次は「大型一種・大型二種」のAT化が始まり、また同じように「車がない!」というパニックが起こる未来が見えています。
思い返せば、2025年から始まった「普通車MT免許を取得する場合、教習の大部分をAT車で練習する」という法律でさえ、未だに多くの教習所が新法律を取り入れず、既存の方法のまま教習を行っているのが現状です。
この3年間で矢継ぎ早に行われた急激な法改正。完全に現場の教習所に浸透するまで、一体あと何年かかるのでしょうか。そして何より、現場の指導員や教習生をこれほど混乱させてまで、急いでやらなければならない法改正だったのか……。私たち現場の人間には、多くの疑問が残るばかりです。

