平成19年の道路交通法改正より中型、大型、中型二種、大型二種免許に関わる車両の基準や教習内容などが大きく変わりました。変更点は「路端への停車」や「貨物特性」「夜間の運転」など様々ですが、今回はその中でも苦手な方の多い「隘路(あいろ)」について解説いたします。
隘路って何?
調べるとこんなことが書いてあります。
あいろ【隘路】
①狭い道。狭く険しい道。
②物事を進めるのに障害になるもの。難関。ネック。
③ボトルネックに同じ。
教習で行う「隘路」は②の意味が強いのかなと思いますが、よくこんな名前をつけたものだと感心します。
では、本当に「障害」となり、「難関」なのか?
その中身に入っていきます。
まず、隘路とはどんなことをするのかといえば、一言で言うとコンビニなどの駐車場でたまに見かける いわゆる「前向き駐車」です。ただし、まっすぐの状態からの駐車ではなく90度向きを変えて入れなければなりません。
その格納する場所の白線の長さや幅は次の通りです。
隘路の白線の長さや幅
因みに中型、大型自動車の幅や長さは次の通りです。
・中型 長さ→約8m
幅 →約2.3m
・大型 長さ→約12m
幅 →役2.5m
隘路について、「前向き駐車」と説明しましたが、格納する場所は、上の図の中央部にある、長さ12m(中型車は8m)の2本線の間です。実寸から考えると、長さにはほとんどゆとりがないものの、幅に関しては、中型大型それぞれ0.5m程度のゆとりがあります。
隘路を行う際のルール
・上の図の左側の最も長い白線は踏んではならない。踏んだ場合は、脱輪となる。
・左側の長い白線に沿わせている状態から90度右(左)に向きを変えている間は途中停止してはならない。
(止めた場合は、全身迂回でやり直しとなる。)
・中央の12(8)mの白線を踏むことはできる。
・格納範囲は中央2本線の進行方向前側と左右側方からミラー以外の車体の一部がはみ出ないところ(下のイラスト 色の部分)。
・格納範囲から逸脱している場合には3回以内で切り返しできる(4回で検定中止)。<切り返し範囲は後ほど紹介>
隘路のコツ、裏技紹介
①−1外側の白線を踏まないように、しっかり添わせる(添わせることにより曲がる側に距離的なゆとりができる。)。
①−2前車輪が手前の白線を超えるくらいのタイミングでハンドルを回す。
前輪の位置が掴めない場合は、自分なりに回し始めの目印を作る。目印の立て方は、運転手の肩が手前の白線を超えたぐらいで回し始めると覚えるのが基本ですが、感覚には個人差があるため、人によっては、入るスペースの中央に自分の肩が来たら回すと覚える方もいるようです。何度も練習していくうちに目印を微妙に修正し、検定までに確実なタイミングを掴んでおきましょう。
②−1曲がっていく途中は、車両全体の動きを確認する。
・後輪の軌跡(この場合、中央の白線を踏んでいても問題はない。後輪が曲がった先のどこに入ってくるかを予測しながら通る。)
・左右の幅(左右のミラーで後方に見えてくる左右の白線と車両の幅との隙間がバランスよく均等な間隔で進入できているかを確認。)。
・曲がる側の前車輪(イラストの場合、右前輪)が概ね2本線の外側から少しだけ外にはずれて曲がれているか(イラスト 色の線、この位置を通れていればハンドルが全部回っている状態だった場合ベストラインと言える)。
③左右のミラーなどで指定の範囲に収まっているかを確認して、収まってれば、N(ニュートラル)ギアに入れ、パーキングブレーキをかけて、終了した旨を検定員に告げる。収まってなければ止まることなく切り返しを開始する。
課題の範囲から逸脱した場合の切り返し
課題の範囲から逸脱した場合の例
④課題の範囲から前がはみ出している
⑤課題の範囲から横がはみ出している
隘路の切り返し範囲
④や⑤のように課題の範囲に収まらなかった場合は、直ちに切り返しを行います。ただし、切り返しの範囲も決まっており、その範囲から逸脱した場合は、検定中止となりますのでご注意ください。
前の切り返し範囲は、3(2.7)mに引かれた白線からミラー以外の車体の一部が超えないこと
後ろの切り返し範囲は、後輪の接地面が格納範囲を超えないこと
この範囲の中で3回まで切り返しを行うことができます。
切り返しの方法
切り返しの方法は、その状況によって様々ですが、イラスト⑤の状況からでもその後の前進のなかでイラスト④の状態に誘導できれば、あとはまっすぐ下がるだけなので「切り返し」としては非常に楽になります。しかし、大幅にズレてしまった時などは、普通自動車の車庫入れなどでよく使われる「幅寄せ」が有効となります。
おわりに
記事冒頭で、隘路は「前向き駐車のようなもの」と説明しましたが、私はバックで車庫入れするよりも前向き駐車の方が難しいと思います。その理由は、後輪の動きを読み取って内輪差の影響を考え全車輪を誘導しなければならないからです。
しかしながら長さは違えど、やっていることは普通自動車での考え方と全く一緒。
・ハンドルの回し始め
・車輪の動き
・切り返しなど
この記事で紹介したポイントを参考に実践すれば苦手な方も必ず克服できるはず。
因みに今まで私が見させていただいた方で、隘路が苦手な方は、そもそも低速のコントロールの苦手な方が多かった印象です。
そんな方へ低速コントロールについても別の記事で紹介したいと思います。
それでは健闘を祈ります。