【高齢者講習】高齢者も大変だけど教習所も困ってる

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近年、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題となっています。
「ブレーキとアクセルの踏み間違い」「高速道路の逆走」などの操作ミスや判断ミス。また認知症が原因と思われる通常では考えられないような重大事故が、連日のように報道されています。
交通事故死者数が減少する一方で、高齢者が関わる死亡事故は急増

こいった背景から、平成29年3月より教習所で行う高齢者講習が強化されました。以前よりも高度で合理的な講習内容となり、高齢ドライバーによる交通事故の抑止率を高めることと、免許証の返納率を高めることが大きな狙いと言えるでしょう。

この法改正により、75歳未満の高齢者は、3時間講習から2時間講習へと短縮されたため、講習時間だけでなく料金も安くなりメリットの強い改正だったと言えます。

しかし75歳以上の方にとっては、これまでは認知機能検査当日に講習が受けられていたものが、認知機能検査後新たに講習の為の予約を取り直し、別日に講習を受講しなければならなくなりました。また講習内容も認知機能検査の結果次第では2時間講習(5,100円)と3時間講習(7,950円)に分けられ、年金生活の方にとってはかなり苦しい法改正(改悪?)になったと言えるでしょう。

運転免許の更新については、ゴールド免許であっても71際以上の方は免許の有効期限を3年しか受けられず、認知症でもなく、無事故無違反の方にとっては、何のメリットもない講習であるわけです。因みに違反をされてる方(試験場でないと更新手続きができない)にとっては本講習が違反者講習を兼ねているので、講習後警察署でも更新手続きが可能となり多少メリットはあります。

法改正後、高齢者講習の受講料が上がったんだから教習所はさぞ儲かっているだろうと思いませんか?

実はそんなことありません。

というわけで、今回は「高齢者講習の法改正によって教習所も困っている」という話をしたいと思います。

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高齢者講習の問題

講習料金

講習料金については平成31年1月現在、
75歳未満の方は5,100円(2時間講習
75歳以上の方は認知機能検査750円(結果まで含めて約1時間)で
5,100円(認知機能検査の点数が76点以上の方、2時間講習

7,950円(認知機能検査の点数が75点以下の方、3時間講習
と非常にお高い設定ではあると思いますが、
しかし1時間毎の売り上げで考えると、指導員1人につき受講者が1人だった場合で2,550円、2人だった場合で5,100円、3人だった場合で7,650円となります。
また認知機能検査にいたっては、1人で10人まで受け持つことができますが、10人行なった場合で7,500円の売り上げとなります。

しかし、講習の裏では、講習時間前の会計や事務処理などの時間は含まれていませんし、また予約の突発的なキャンセルもあります。因みに通常の教習業務であれば、1時間につき普通車教習で時間単価で4500円以上に設定している教習所が多く、車種によっては、1時間あたり10,000円以上のものもあるので、高齢者講習の生産性の低さが窺えます。普通の教習をやってた方が儲かります。

しかも、都道府県によっては、教習所の売り上げとして100%計上できる場所もあれば、何%か行政に持っていかれる「県」もあるようなので、全国で統一した仕組みづくりが求められるところです。

であれば「講習料金をあげるべき?」という意見もありますが、これ以上年金生活の人からお金を徴収することも難しく、私はお金を上げることよりももっと少ない人員で多くの方が受講できるような講習の簡略化が望ましいと思っています。

講習時間

講習時間も教習所関係者の間では大きな問題となっています。

理由は、

教習時限は50分に対し、
高齢者講習時間は、60分単位になっているため、指導員の休み時間がなくなってしまうということです。

通常の教習では、インターバルの10分間の間にトイレやタバコを済ませ、次の時間の準備にあてますが、講習時間は60分毎に設定されているため、休む間も無くすぐ次の講習や教習を行わなければなりません。教習所によっては休み時間を取らせない時間設定になっていると聞きます。また、休み時間を作ったとしても通常の教習とは10分ずつの時間差が生まれ、講習担当者は、タイミングよく教習業務に移動できないという問題があるんです。

今となっては後の祭りですが、高齢者講習というものは、そもそもほとんど教習所で行なっているわけですから、教習所のカリキュラムに沿った仕組みづくりを検討すべきでした。

担当者の人数と資格

担当者の数は、
1人の担当者につき受講者3人までで最大12人の方が一回の講習で受講できます。
また、認知機能検査では、最大15人(指導員は2人)までしか受検できません。

それ以外にも会計や事務処理を行う者、また認知機能検査では採点要員(原始的な採点方法により時間がかかる)など、一回の講習で多くの職員が動いています。教習所によっては高齢者講習に多くの職員を従事させ、本来の仕事である通常の教習業務に人手が足りなくなり、予約が取れなくなっている教習所もあるそうです。

また講習を担当できる指導員は高齢者を実施するための資格が必要で、その資格取得には茨城県ひたちなか市にある中央研修所に派遣され泊まり込みで取得しなければならず、当然そこにも経費がかかります。

どの業種もそうかもしれませんが、教習所業界は今や人手不足が大きな問題で、資格を取らせてもやめてしまったり、そもそも職員の数が少ないので高齢者講習に人を回せないなど、近年の道交法改正によって仕事量は増えているのに職員数や売り上げは増えないという超悪循環に陥っています。そういった意味で高齢者講習に大きく力を注ぐことのできない教習所ばかりなので、高齢者の間では予約が取れないといった声も多く出ている現状であります。

予約を取ってあげられない

前述の通り、予約を取れないのには理由があります。

そもそも教習所のキャパシティを計算せずに見切り発進気味の法改正だったため、はっきりいってパンクしてます。

新潟県など独自の方法で予約がスムーズに取得できる仕組みを取っている都道府県もありますが、東京や愛知県を始め多くの場所では、講習の予約が3ヶ月待ち4ヶ月待ちが当たり前の状態になっています。

また高齢者講習の予約が取れないという理由で免許を失効される方が続出しています。もちろん失効すればその間は運転できなくなります。
因みに失効しても半年以内に更新手続きを完了すれば、免許は戻ってきますが…。

この状況を見て警察庁が何も手を加えないのが不思議でしようがありません。

法律を改悪し、自らの失態を隠すかのように傍観しているように思えてなりません。

講習内容

講習内容にもいろいろ問題がありますが、

今回は運転実技の中身に触れておきます。
運転講習は、S字やクランクなどの技術的なことから法規走行などを実施します。

高齢者の方も50年の運転経験があるわけですから、それなりにプライドもあります。あくまでも講習であって教習ではありませんので、95%以上の方は仮免も取れないくらいの運転能力なのが残念ですし、こんな人たちが同じ道路を使っていると思うと、怖くてたまりません。

もちろん最後の講評ではプライドを傷つけないようにアドバイスをさせていただきます。

問題なのは、こんな狭い教習所で、一時停止を守らない高齢者と免許も持っていない教習生が共存しているわけですから事故を起こさない方が難しい。それを気を張って事故が起きないように最善を尽くしているんです。

 

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まとめ

そのほか、高齢者講習に関わる教習所の苦悩を挙げればキリがありません。例えば、予約の電話が長すぎてなかなか切ってくれないとか、やりたくもない講習に来てるので何かあるとすぐにキレるおじいちゃんとか、たまに講習中お漏らしする方も…。

この記事は、教習所に携わる方が見ていただいた方が共感を持っていただけるかもしれませんが、本心から言うと是非高齢者の方に一読していただきたい内容であります。

警察庁も今後、このような様々な意見を精査し、改善を目材したいと言うコメントを発表しているということです。

高齢者講習は、安全安心の交通社会実現の為に欠くことのできない講習です。

私たちも免許を更新する以上、いつか必ず受けなければなりません。免許を持つ全ての方に関わる話、また高齢者の事故防止は自らの身をも守るという深いテーマであることは、全ての方が共有し、もっとよく話し合っていかなければならないものだと思います。

 

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