今月から施行された新しい道路交通法。自転車側の違反への罰則ばかりが注目されていますが、実は「車側」の走行ルールにも非常に大きな変更がありました。
それは**「自動車が自転車の横を通り抜ける時のルール(第18条3)」**です。 具体的には、車が自転車を追い越す際、以下のどちらかを必ず守らなければならなくなりました。
- 最低でも自転車と1m以上の側方間隔を空ける
- 1m空けられない場合は、時速20km〜30kmの安全な速度に減速して通過する
これだけ聞くと「まあ、自転車の安全のためなら仕方ないかな」と思うかもしれません。しかし、これが日本の道路事情において、いかに現実離れしたルールであるか、皆さんはお気づきでしょうか。
交通業界から悲鳴!「はみ出し禁止」の矛盾とSNSの拡散
自転車との間に「1m」の空間を作ろうとすると、少しでも狭い道路であれば、車は必ず**「黄色のセンターライン(はみ出し禁止)」**をまたぐことになります。 しかし、道交法第17条では、黄色の線を越えての追い越しは絶対に禁止されています。
つまり、**「自転車から1m離れなさい。でも、黄色の線は絶対に超えちゃダメだよ」**という、究極の矛盾(無理ゲー)が誕生してしまったのです。
これに対し、日夜道路を走る運送業などの交通業界からは怒りの悲鳴が上がっています。 「じゃあどうすればいいんだよ!」「何キロにもわたって自転車の後ろを時速20キロで付いて行けってことか!」「法律を変える前に、まずは自転車専用レーンのインフラ整備が先だろ!」
さらに、自転車側も「歩道を走ったら青切符を切られる」と恐れているため、どんなに狭い道でも車道を走るようになっています。 その結果、X(旧Twitter)やYouTubeなどでは、追い越すことができない大型トラックの後ろに大渋滞が発生している動画が拡散され、「こんな改悪ありえない!」と多くのドライバーが怒りの声を上げる事態になっています。
暴露!教習所の「苦肉の策」と本音
もちろん、例に漏れず私たち教習所業界もパニック状態です。
実を言うと、これまでの教習現場では「自転車との安全な間隔も大事だが、交通の円滑な流れも同じくらい大事である」という考え方が主流でした。そのため、前後の安全が完全に確保されていると指導員が判断した場合は、一時的に黄色の線を越えて自転車を追い越す行為にも、ある程度は目を瞑っていた(指導員の裁量に任せていた)のが実態です。
しかし、今は違います。これだけ世間が過敏になっている中、もし教習車が黄色の線をまたいで追い越しをしている様子が、周囲の車のドラレコやスマホで撮影され、SNSに**「教習車が堂々と違反してるぞ!」**と晒されてしまったら……教習所としてはたまったものではありません。
その恐怖と板挟みになった結果、現在多くの教習所では、以下のような「苦肉の策」をとってなんとか凌いでいます。
- 「黄色い線がある道では、自転車を追い越さず、ひたすら後ろをついて行け」と指導する。
- これだけ騒がれているのだから、警察庁から現実的な見解が発表されるのを待つ(たぶん出ないだろうけど)。
- 世間のほとぼりが冷めるまで、とにかく大人しくしておく。
- 地元の警察署と「うちの教習車はどう走ればいいんですか?」と協議を図る。
現場の指導員たちも「こんなの教習にならないよ……」と頭を抱えながら、毎日助手席に座っています。
教習生は絶望?卒検基準が「一発アウト」に厳罰化
そして、この混乱の最大の被害者は、これから免許を取る教習生の皆さんかもしれません。 この法改正に合わせ、運転免許の「卒業検定」の採点基準が恐ろしく厳しくなりました。
これまで、自転車との側方間隔が不十分だった場合、多くは「側方間隔不保持(-20点)」の減点で済んでいました(これでも痛いですが)。 しかし今後は、1mの間隔を空けられないにも関わらず、十分な減速をせずに追い越そうとした場合、**「接触大(危険行為)」とみなされ、その場で【検定中止(一発アウト)】**となる運用に変更されました。
教習生は、ただでさえ緊張する検定中に、自転車が現れるたびに「間隔を空けるか」「減速するか」「黄色い線を越えないか」というシビアな判断を迫られ、少しでも判断を誤れば即不合格という、まさに絶望的なプレッシャーと戦わなければならないのです。
まとめ:これは「法改悪」ではないか?
「安全第一」という理念は痛いほど分かります。しかし、日本の狭い道路インフラを無視し、矛盾したルールだけを見切り発車で押し付けた今回の法改正。
正直に言います。毎日道路の最前線で安全を教えている人間の本音として、私はこれを「法改正」ではなく、道路に混乱とイライラを蔓延させる**「法改悪」**だと思っています。
現場のドライバーや教習生にすべてのしわ寄せがいっているこの現状。 皆さんは、この新しいルールについてどう思いますか?

