【あおり運転】教習車をあおる「車椅子マーク」の車。譲り合い精神のかけらもないドライバーの末路と心理

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交通ルールその他

教習所の指導員をしていると、毎日さまざまなドラマに遭遇します。 技能教習中は、生徒さんの安全を守るために神経をすり減らしていますが、時として、その神経を逆なでするような「信じられないドライバー」に出くわすことがあります。

先日、路上教習中に遭遇したある出来事について、どうしても皆さんに共有し、そして一緒に考えていただきたいことがあります。 それは、**「弱者を守るべきマークをつけた車が、交通弱者である教習車をあおる」**という、あまりにも理不尽で矛盾に満ちた事件でした。

今回は、この実録エピソードを元に、2020年に厳罰化された「あおり運転(妨害運転罪)」の現実と、ハンドルを握ると豹変してしまうドライバーの心理、そして「車椅子マーク」の重みについて、深く掘り下げて解説します。

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1. 恐怖の現場:教習車はサンドバッグではない

その日、私は普段通り技能教習の助手席に座り、仮免許を持った教習生の指導にあたっていました。 片側2車線の道路。教習車は左車線を走行していましたが、前方の状況により右車線へ進路変更をする必要が生じました。

「よし、右へ車線変更しましょう。ミラーで確認して」

教習生は緊張しながらも手順通りにルームミラーとドアミラーを確認。 私も補助ミラーで後方を確認しました。右車線の後方、かなり遠くに1台の乗用車が見えましたが、距離は十分にあり、速度差を考えても安全に進路変更ができるタイミングでした。

「合図を出して、もう一度確認。はい、行きましょう」

教習生が右ウインカーを出し、ハンドルを切り始めたその瞬間です。 バックミラーに映る後続車の挙動が急変しました。

「ブォォォォォォン!!」

遥か後ろにいたはずのその車が、こちらのウインカーを見た瞬間にアクセルをベタ踏みし、猛烈な勢いで加速してきたのです。 明らかに「入れさせない」という意思表示です。

しかし、教習車はすでに車線変更を開始しており、半分ほど右車線に入っていました。 後続車は教習車の真後ろギリギリまで肉薄し、**「プーーーーーーッ!!」**と長く鋭いクラクションを鳴らし続けました。 典型的な「あおり運転」です。

教習生はパニックになりかけましたが、私は冷静にハンドルを補助し、車線変更を完了させました。 すると、あろうことかその車は、今度は左車線(もともと教習車がいた車線)に荒々しく車線変更し、急加速して教習車の真横に並びました。 そして、こちらの速度に合わせて並走し、運転席の男がこちらを睨みつけながら、幅寄せをするような仕草を見せ、猛スピードで走り去っていきました。

教習生の手は震えていました。 「先生、私が無理に入ったんでしょうか……」 「いいえ、あなたは悪くありません。あれは完全な嫌がらせ、あおり運転です」

私は努めて冷静に答えましたが、腹の底では煮えくり返るような怒りを感じていました。 そして同時に、ある確信を持っていました。 **「今の行為、全部ドライブレコーダーに綺麗に映っているぞ」**と。

2. 「妨害運転罪」を知らないのか?免許取消の代償

あのドライバーは、自分の行為が「ちょっとした腹いせ」程度に思っているのかもしれません。 「教習車の後ろなんて走りたくない」「トロトロ走るな」 そんな軽い気持ちだったのでしょう。

しかし、2020年(令和2年)の法改正により、その「軽い気持ち」は、**「人生を棒に振る重罪」へと変わりました。 あおり運転は現在、「妨害運転罪」**として厳しく処罰されます。

あおり運転(妨害運転)の定義

警察庁は、あおり運転として処罰される「10の類型」を定めています。 今回のケースを当てはめてみましょう。

  1. 車間距離不保持: 猛スピードで背後に迫り、極端に距離を詰めた行為。
  2. 急な進路変更: 左車線へ荒々しく移動した行為。
  3. 不必要なクラクション(警音器使用): 危険を防止するためではなく、威嚇のために鳴らし続けた行為。
  4. 幅寄せ・蛇行運転: 左側から並走し、威嚇した行為。
  5. 左側からの追い越し: 左車線を使って追い抜いていった行為。

まさに「役満」と言えるほど、違反項目に該当しています。

一発で免許取消になる重い罰則

では、捕まったらどうなるのか。 妨害運転罪には2つの段階があります。

① 妨害運転(交通の危険のおそれ) 他の車両を妨害する目的で、車間距離を詰めたり急ブレーキをかけたりして、交通に危険を及ぼす「おそれ」を生じさせた場合。

  • 刑罰: 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金
  • 行政処分: 違反点数 25点(一発で免許取消)
  • 欠格期間: 2年(免許を再取得できない期間)

② 妨害運転(著しい交通の危険) ①の行為により、高速道路上で相手を停止させるなど、実際に著しい危険を生じさせた場合。

  • 刑罰: 5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金
  • 行政処分: 違反点数 35点(一発で免許取消)
  • 欠格期間: 3年

今回のケースは、少なくとも①には確実に該当します。 たった数秒、感情に任せてクラクションを鳴らし、教習車を脅かしただけで、免許を失い、2年間は車に乗れなくなるのです。 仕事で車を使っている人なら、即解雇につながる可能性もあります。 「教習車が邪魔だった」という理由で支払う代償としては、あまりにも大きすぎると思いませんか?

3. データで見るあおり運転の現状

「そんなに簡単に捕まらないだろう」 そう思っているドライバーがいるなら、認識を改めるべきです。

警察庁の発表によると、あおり運転(車間距離不保持などを含む関連違反)の検挙数は、年間で10,000件〜12,000件にも上ります。 そのうち、特に悪質な「妨害運転罪」として検挙されるケースは年間100件を超えています。

ドラレコが「動かぬ証拠」になる

特筆すべきは、検挙のきっかけです。 かつては現行犯でなければ捕まえるのが難しかったのですが、現在は**「ドライブレコーダーの映像」**が決定的な証拠となり、後日、警察が自宅にやってきて逮捕されるケースが激増しています。 私の教習車にも、前後左右を常時録画する高性能なドラレコが搭載されています。 あのドライバーの顔も、ナンバープレートも、クラクションの音も、全て鮮明に記録されています。警察に提出すれば、言い逃れはできません。

あおり運転が多い地域ランキング

参考までに、検挙数や意識調査から見る「あおり運転が多い都道府県」の傾向を見てみましょう。

  • 1位:静岡県 東名・新東名という大動脈が走り、長い直線でスピードが出やすいため、車間距離不保持が多発しています。
  • 2位:神奈川県 交通量が圧倒的に多く、首都高や東名の複雑な合流・分岐でイライラが募りやすい環境です。
  • 3位:大阪府 都市部の過密な交通状況に加え、強引な車線変更や割り込みに対する「報復」としてのあおり運転が目立ちます。

共通しているのは、「余裕のなさ」です。 混雑や急ぎの心理が、ドライバーを犯罪者へと変えてしまうのです。

4. 【核心】「車椅子マーク」の矛盾とドライバーの心理

さて、今回の事件で私が最も衝撃を受け、かつ憤りを感じた点についてお話しします。 それは、私をあおってきたその車のリアガラスに、**「車椅子マーク(国際シンボルマーク)」**が貼られていたことです。

強烈な皮肉と矛盾

青地に白の車椅子のマーク。 これは本来、「障害のある方が乗車しています。乗降時のスペース確保や、周囲の配慮をお願いします」という意味を持つシンボルです。 つまり、周囲に対して**「優しさ」や「配慮」を求めるマーク**です。

そのマークを掲げた車が、道路上で最も配慮を必要とする**「仮免許練習中(=未熟な運転者)」**の看板を背負った車に対し、配慮どころか、敵意を剥き出しにして攻撃してきたのです。 これほど皮肉で、悲しい矛盾があるでしょうか。

本当に障害者が運転していたのか?

もちろん、足の不自由な方が手動装置などを使って運転していた可能性はあります。 しかし、あの俊敏な車線変更、猛烈な加速、並走して睨みつける余裕……その運転スタイルからは、身体的なハンデを感じさせる要素よりも、「自分さえ良ければいい」「邪魔な奴は排除する」という、精神的な傲慢さが透けて見えました。

ここで一つの疑念が頭をよぎります。 **「あのマーク、ただの『ダミー』ではないか?」**という疑念です。

残念なことに、スーパーやショッピングモールの入り口付近にある「車椅子専用駐車スペース」に停めたいがために、健康な人がファッション感覚や利己的な目的で車椅子マークを貼っているケースが後を絶ちません。 100円ショップやカー用品店で誰でも買えてしまうため、悪用する人がいるのが現実です。

車の運転には、その人の「本性」が出ると言われます。 もし、あのドライバーが健常者でありながら、駐車時の利便性のためだけにマークを貼り、公道では教習車をあおり倒しているのだとしたら……。 それは道路交通法違反という以前に、人間としてのモラルが完全に欠落していると言わざるを得ません。

5. まとめ:ハンドルを握ると性格が変わる人へ

「車」という鉄の箱に守られ、匿名性が高まると、人は気が大きくなりやすい生き物です。 普段は大人しい人が、ハンドルを握った瞬間に攻撃的な性格に変わることは珍しくありません。

しかし、現代は「一億総監視社会」です。 あなたのその攻撃的な運転は、誰かのドライブレコーダーに記録され、SNSで拡散され、最終的には警察に届くかもしれません。

「教習車の後ろにつくとイライラする」 その気持ちは、百歩譲って分からなくもありません。私も急いでいる時なら、心の中で「遅いなぁ」と思うことはあるでしょう。 ですが、それを**「あおり運転」という暴力的な行動に移すかどうか**が、理性の分かれ目です。

教習車は、未来のドライバーを育てるための車です。 あなたもかつては、ガチガチに緊張して教習車に乗っていたはずです。 「お互い様」の精神を忘れないでください。

そして、自分の車に貼っているマークの意味を、もう一度考えてみてください。 車椅子マーク、初心者マーク、高齢者マーク。 それらは全て「安全と配慮」のための目印であり、免罪符でも、特権階級の証でもありません。

今回の件は、教習生にとっても、そして指導員である私にとっても、非常に後味の悪い、しかし考えさせられる出来事でした。 教習生には「世の中にはああいう変な人もいるから、君はああならないように、心にゆとりのあるドライバーになろうね」と伝えました。

さて、今回は「車椅子マーク」の話が出ましたが、実は車に貼るマーク(標識)には、法的に表示義務があるものと、そうでないもの、そして意外と知られていない「本当の意味」を持つものがたくさんあります。 クローバーのマークや、蝶々のマーク、見たことありますか?

次回は、知っているようで知らない**「車のマーク(標識)」**について、その正しい意味と法的効力を徹底解説したいと思います。 あなたの車に貼ってあるそのマーク、本当に正しい使い方ができていますか?

お楽しみに。