【意外と知らない】4台の車が交差点で鉢合わせた場合の「優先順位」を徹底解説!

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交通ルールその他

こんにちは!現役の教習所指導員として働きながら、このブログ『online-ds.jp』を運営している管理者です。

日々、免許を取りたての方からベテランドライバーの方まで、運転に関する様々な疑問が寄せられますが、その中でも意外と知らないルール**「信号のない交差点での優先順位」**。

今日は、指導員でも知らない者が多いケースを題材に、道路交通法の条文を紐解きながら、その正解と「法律以上に大切な現場のルール」について徹底解説します。

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あなたならどうする?交差点の「4すくみ」問題

まずは、こちらの画像をご覧ください。

信号機も一時停止の標識もない、見通しの良い同幅員の交差点です。そこに東西南北、4つの方向から同時に車が進入してきました。

  • A車(下): 右折
  • B車(左): 直進
  • C車(右): 左折
  • D車(上): 直進

さあ、この状況で**「一番最初に動ける」のはどの車でしょうか?**

「直進が優先だからBかD?」「いや、左方優先だから…」 少し考え始めると、頭の中で車たちがぶつかってしまいそうになりませんか?

実はこれ、道路交通法の原則を一つひとつ当てはめていくと、**「誰も動けない」**というパラドックス(矛盾)に陥ってしまう意地悪な問題なのです。しかし、プロの指導員視点で法規をパズルのように解き明かせば、論理的な「正解の順番」が見えてきます。

正解をお伝えする前に、まずはこのパズルを解くための「2つの法的根拠」をおさらいしましょう。免許を取って数十年という方も、復習がてら確認してみてください。


第1章:まずは基本!「左方優先」の原則

信号のない交差点において、最も基本となるルール。それが**「左方優先(さほうゆうせん)」**です。

教習所では「左の方(ほう)から来る車が優先」と教わりますが、正確な条文はどうなっているでしょうか。

【道路交通法 第36条第1項第1号】 車両等は、交通整理の行われていない交差点においては、次の場合を除き、左方から進行してくる車両等の進行妨害をしてはならない。

簡単に言えば、**「自分の左側から来る車があったら、その車を先に行かせなさい(譲りなさい)」**ということです。

例えば、上の図を見てください。 あなた(A)にとって、Bは「左側」から来ていますよね。この場合、あなたはBを先に行かせなければなりません。

なぜ「左」が優先なのか?

これには日本の交通事情が深く関係しています。日本は「左側通行」ですよね。 交差点において、左側から来る車は、あなたにとって**「運転席から一番遠い位置(助手席側)」から現れますが、相手(左から来る車)にとっては、あなたが「運転席に近い側(運転席側)」**に見えます。

また、動線としても、左から来る車の方が交差点内での移動距離が短く、先に交差点を抜けやすいという物理的な事情もあります。 (※諸説ありますが、日本の道路事情では「左側の視認性や動線」を考慮して定められたと言われています)

まずは**「迷ったら左を見る。左に車がいたら譲る」**。これが鉄則その1です。


第2章:右折車の運命(直進・左折優先)

次に、今回のパズルの「カギ」を握る重要なルールです。それが**「右折車の優先順位」**についてです。

交差点で右折待ちをしている時、対向車が途切れるのをジッと待った経験は誰にでもあるでしょう。これは単なるマナーではなく、明確な法律上の義務です。

【道路交通法 第37条】 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

この条文が意味するのは、**「右折車は、交差点の中で一番立場が弱い」**ということです。 直進してくる車はもちろん、左折してくる車に対しても、右折車は道を譲らなければなりません。

「先に交差点に入ったから勝ち」ではない

よくある勘違いに、「俺の方が先に交差点に入っていたから、後から来た直進車より先に右折してもいいだろう」というものがあります。 しかし、法第37条には「先に進入した方が優先」とは書かれていません。あくまで**「直進・左折の邪魔をしてはいけない」**のです。

どんなに急いでいても、右折車は「待つ」のが仕事。これが鉄則その2です。


第3章:【番外編】右折 vs 右折のレアケース

少し話がそれますが、意外と質問が多い**「お互いに右折したい場合」**についても触れておきましょう。

図のように、あなた(A)も右折、対向車(B)も右折。この場合、どちらが優先でしょうか?

正解は、**「優先関係はない(対等)」**です。 お互いに直進車の妨害にならなければ、同時に曲がることができます。ただし、曲がり方にはルールがあります。

昔の道交法では、交差点の中心の「外側」を回る必要がありましたが、現在は**「交差点の中心の直近の内側」**を回ることになっています(道路標示などで指定がある場合を除く)。

現場指導員からのアドバイス:死角に潜む「サンキュー事故」

右折同士ですれ違う時、一番怖いのは**「相手の車の影」**です。 相手の右折車(B)に視界を遮られ、その後ろから直進してくるバイク(二輪車)が見えないことがあります。

「あ、相手が譲ってくれた!今のうちに曲がっちゃえ!」と急いで右折を開始した瞬間、影から飛び出してきたバイクと衝突…。これがいわゆる**「サンキュー事故(右直事故)」**の典型パターンです。

優先関係がないからこそ、お互いの死角に細心の注意を払う必要があります。


第4章:【本題の解答】パズルを解く!誰が一番先に動ける?

さあ、お待たせしました。本題の「4台の膠着状態」に戻りましょう。 これまでの知識(第36条と第37条)を使って、このパズルを解いていきます。

  • A車(上): 右折
  • B車(右): 直進
  • C車(下): 左折
  • D車(左): 直進

ステップ1:「左方優先」だけで考えると…?

まず、基本の「左方優先(第36条)」だけで順位をつけてみましょう。

  1. Aから見て: 左にBがいる → Bが優先(Aは動けない)
  2. Bから見て: 左にDがいる → Dが優先(Bは動けない)
  3. Cから見て: 左にAがいる → Aが優先(Cは動けない)
  4. Dから見て: 左にCがいる → Cが優先(Dは動けない)

ご覧の通り、A < B < D < C < A… とジャンケンのように関係がループしてしまい、法律上は誰も一歩も動けなくなってしまいます。これが「左方優先のパラドックス」です。

ステップ2:「右折車」に着目してロックを解除する

ここで登場するのが、第37条の**「右折車(A)」**です。

Aは、左方優先の権利を持っていますが、同時に**「右折車」でもあります。 法第37条により、Aは対向から直進してくるD**の進行を妨げてはいけません。

つまり、Aは以下の2つの理由で「がんじがらめ」の状態です。

  1. 左から来るBがいるから動けない(左方優先)
  2. 対向のDがいるから動けない(直進・左折優先)

この4台の中で、Aが最も優先順位が低い(動けない)存在であることが確定します。

ステップ3:論理的な「正解」の順序

Aが「絶対に動けない」とわかった時、状況が動き出します。

  1. C(左折)の判断: 本来、Cは自分の左にいるA(右折)を優先すべきです。しかし、そのAは「対向のD(直進)」を待たなければならず、動く気配がありません。 さらにCは「左折」であり、A(右折)よりも動作の優先度が高いといえます。 「Aは動けないな。それなら、私が先に左折してしまおう」 ここで、Cが最初に動きます。
  2. D(直進)の判断: Cが抜けたことで、この3台の中で最も「直進優先」であり「左方がいない」というの恩恵を受けられるDが次に通過します。
  3. B(直進)の判断: Dがいなくなれば、Bの左側に車両はなく、右側にいるAは右折であり、右方の車両になるため、 ここでBが直進します。
  4. A(右折)の判断: 全ての直進・左折車がいなくなりました。ようやくAが右折できます。

よって、論理的に導き出される正解の順番は、 「C(左折)→ D(直進)→ B(直進)→ A(右折)」 となります。


第5章:本当のデッドロック「全員直進」の場合

さて、先ほどのパズルは「右折車」がいたおかげで、論理的に解くことができました。 しかし、もし4台すべてが「直進」だったらどうなるでしょうか?

これこそが、法律も手上げする**「真のデッドロック(膠着状態)」**です。

  • 全員が「左側に車がいる」。
  • 全員が「直進同士で対等」。

法律の条文をどれだけ探しても、この状況で「誰が先に行くべきか」という規定はありません。 もし、全員が「俺が優先だ(左方優先だ)」と主張して同時に発進すれば、交差点の中央で4台が衝突する大事故になります。

ここで必要なのは「法律」ではなく「心」

この状況を解決する手段はただ一つ。 **「譲り合い」と「アイコンタクト」**です。

誰か一人が、ドライバーと目を合わせ、 「お先にどうぞ」 と手を挙げる(ハンドサインを送る)。 あるいは、パッシングで合図を送る。

その「譲り」の心がきっかけとなって、時計回り(あるいは反時計回り)に一台ずつ動き出し、交差点のロックが解除されます。 道路交通法は完璧なルールブックではありません。最後は、私たちドライバーの**「コミュニケーション」**に委ねられているのです。


結論:事故を起こさないドライバーになるために

ここまで、交差点の優先順位について、法律とパズルの両面から解説してきました。 今回の記事で一番お伝えしたかったのは、クイズの正解そのものではなく、**「優先関係を知った上で、それに固執しないこと」**の重要性です。

交差点は、最も交通事故が多発する場所です。 事故の原因を分析すると、大きく以下の4つに分類されます。

  1. ルールの不理解: 「自分の方が優先だ」と勘違いして突っ込むケース。
  2. 強引な進行(だろう運転): 優先関係は理解しているが、「相手が止まってくれるだろう」「今なら行けるだろう」と無理なタイミングで進入するケース。
  3. 死角の影響: 右折待ちの車の影や、ピラーの死角にいる相手(特にバイクや自転車)に気づかないケース。
  4. 漫然運転: カーナビやスマホの操作、同乗者との会話に夢中になり、交差点への注意力が散漫になっているケース。

優先権は「特権」ではない

今日解説した「左方優先」や「直進優先」は、あくまで交通を円滑にするための秩序であり、「優先車なら何お構いなしに突っ込んでいい」という特権ではありません。

たとえあなたが優先道路を走っていても、脇道から飛び出してくる車がいるかもしれません。 「相手がルールを知らないかもしれない」 「相手から自分が見えていないかもしれない」 そう考えることが、**「かもしれない運転」**の第一歩です。

車は便利ですが、一歩間違えれば人の命を奪う「凶器」にもなり得ます。 そのハンドルを握っているのは、他ならぬあなた自身です。

「法的には自分がいける。でも、相手が迷っているようだから譲ってあげよう」 そんな心の余裕を持ったドライバーが一人でも増えれば、悲惨な交通事故は確実に減らすことができます。

今回の記事が、皆さんの安全意識を再確認するきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。