頭部損傷でも「移動」が最優先?交通事故発生時の救護義務と二次被害を防ぐ7つの鉄則

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学科試験問題集

運転免許の学科試験に挑戦!命を分ける初期対応の判断基準

車を運転していて交通事故の当事者になってしまったとき、ドライバーには道路交通法(第72条)によって定められた三つの重大な義務が課せられます。その中でも最も重いのが**「負傷者の救護」**です。

通常、「負傷者はむやみに動かさない」のが応急処置の鉄則ですが、もし事故現場が高速道路の本線上や見通しの悪い交差点だったら、どうすべきでしょうか?

今回の問題は、**「負傷者の保護」「後続事故(二次被害)の防止」**という、二つの命に関わる義務が衝突した際の、究極の判断基準を問うものです。誤った判断は、ひき逃げ(救護義務違反)の罪や、さらなる多重事故を引き起こす原因となります。

本記事では、事故発生時の法的・実務的な全ステップを網羅し、特に命を守るための初期対応の判断基準、そして高額な賠償に備える保険の重要性までを徹底的に解説します。


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1. 問題提起と回答:負傷者の移動は最優先される例外行動

まずは、交通事故の救護に関する、命に関わる問題を見てみましょう。

問題:「交通事故を起こしたとき、後続事故の恐れがある場合でも負傷者が頭部に傷を負っている時には、医者や緊急自動車が、到着するまでその負傷者を移動させてはならない。」

さて、この内容は

⭕️ 正しい

❌ 誤り


答え:❌ 誤り

正解は ❌ 誤り です。

頭部に傷を負っている負傷者はむやみに動かさないのが原則ですが、後続事故の恐れがある場合(高速道路の車線上、急なカーブなど)、人命を最優先して、安全な場所へ移動させた上で処置を行う必要があります。二次被害を防ぐ義務は、救護義務に並ぶほど重要です。


2. 基礎解説:事故発生時の法的義務と初期対応の順番

交通事故の当事者となったドライバーや同乗者は、事故の大小、人身・物損を問わず、以下の3つの措置を講じる義務があります(道路交通法第72条)。

(1)義務違反は「ひき逃げ」として罰せられる

これらの措置をとらずに現場を立ち去った場合、運転者は**救護義務違反(ひき逃げ)**となり、道路交通法第117条により厳しく処罰されます。負傷が軽微だと自己判断した場合や、負傷者がいることを知らずに立ち去った場合でも、同様に罰せられる可能性があります。

(2)初期対応の最優先事項と順序

法的義務と安全を考慮した、事故発生時の初期対応の正しい順序は以下の通りです。

Step 1:運転の停止と危険の除去(二次被害防止)

事故の続発を防ぐため、ただちに運転を停止し、以下の措置を行います。

  • 車の移動: 交通の妨げにならない安全な場所(路肩など)に車を移動させ、エンジンを切ります。
  • 警告表示: 車を動かせない場合は、ハザードランプをつけ、三角停止表示板発炎筒を使い、後続車に停車車両がいることを知らせます。

Step 2:負傷者の救護(最優先)

人や物に対する被害状況を確認し、負傷者がいる場合は何より優先して救護措置を行います。

  • 救急車の手配: すみやかに救急車を呼び、到着までの間にガーゼや清潔なハンカチで止血するなどの応急処置を行います。
  • 重篤な状態の場合: 呼びかけても意識がない場合は、必要に応じて人工呼吸や心臓マッサージも行います。

Step 3:警察への報告

負傷者の救護や危険防止の措置が終わったら、運転者はただちに現場の警察官、または最寄りの警察署に以下の5つの事項を報告しなければなりません。

  1. 事故発生の日時と場所
  2. 死傷者の数と負傷の程度
  3. 損壊した物と損壊の程度
  4. その交通事故にかかわる車両などの積載物
  5. その事故についてとった措置

3. 応用解説:負傷者移動の究極の判断基準

今回の問題の核となるのは、**「負傷者の安全」と「後続車による二次被害のリスク」**のどちらを優先するか、という判断です。

(1)原則と例外の厳格な適用

状況負傷者の移動理由
原則むやみに動かさない頭部や頸椎など、重傷を負っている可能性があり、動かすことで症状を悪化させる危険があるため。
例外安全な場所へ移動させる後続事故の危険がある場合(高速道路の本線車道上など)。二次被害によって命を落とすリスクが、移動による悪化のリスクを上回るため。

特に高速道路上では、後続車による追突は命の危険に直結します。たとえ負傷者が頭部に傷を負っていても、二次被害による死亡リスクがわずかでもあると判断される場合は、躊躇なく安全な路肩やガードレールの外側へ移動させる義務があります。

(2)負傷者の救護と「遺体の移動」

なお、被害者が死亡している場合であっても、遺体をいつまでも路上に放置せず、手厚く安全な場所に移動しておくべきです。これは人道上の配慮でもあります。


4. 事故後の情報収集と保険の重要性

事故後の情報収集と保険会社への連絡は、その後の示談交渉や賠償責任において、ドライバーの責任の重さを決める重要なステップです。

4-1. 事故現場での情報収集の鉄則

今後の示談交渉に備え、以下の情報を収集・保存することは、被害者・加害者双方の過失割合を立証するために不可欠です。

収集すべき情報詳細
相手方の情報氏名、住所、連絡先、車のナンバー、契約している保険会社とその証券番号。
現場の証拠スマートフォンで現場写真(衝突地点、停車位置、スリップ痕など)、ドライブレコーダーの映像を保存。
目撃者の情報氏名、住所、連絡先、目撃内容をメモや録音で保存。

【注意点】 今後の手続きに備えるためにも、事故状況の証拠収集は必ず行っておきましょう

4-2. 保険会社への通知の義務

事故の損害に対して自動車保険で補償を受けるためには、加入している自動車保険会社への連絡が不可欠です。

  • 通知義務: 事故発生の日時、場所、事故の概要をただちに通知する義務があります。
  • 警告: 正当な理由なく通知を怠ると、保険金が支払われない場合があるため、事故を起こした際は必ず保険会社(または代理店)に連絡してください。
  • 警察の届け出: 事故の損害に対して自動車保険で補償を受けるには、警察に届け出をした場合に発行される**「交通事故証明書」**が必要となります。

5. 任意保険と自賠責保険の違い(高額賠償に備える)

交通事故の賠償金は高額になることが多いため、保険による備えは、ドライバーの責任として最も重要な要素です。

5-1. 自賠責保険(強制保険)の限界

  • 目的: 相手方への最低限の賠償(対人賠償)を保証する強制保険。
  • 補償範囲: 人の傷害・死亡のみ(対物賠償はなし)。
  • 限度額: 傷害120万円、死亡3000万円。
  • 限界: 死亡事故や後遺障害の場合、賠償額が数億円に達することがあり、自賠責保険だけでは補償が不足するケースがほとんどです。

5-2. 任意保険(任意の加入)の重要性

  • 目的: 自賠責保険で不足する部分や、自賠責では補償されない部分(対物賠償、自分の車の修理費など)をカバーする。
  • カバー範囲: 対人・対物賠償、人身傷害、車両保険など、幅広く補償。
  • 最大のメリット: 任意保険に加入していると、保険会社が示談交渉を代行してくれるため、心理的な負担が軽減されます。任意保険未加入の場合、高額な修理費用や賠償金をすべて自分で工面し、相手と直接交渉する必要が生じます。

交通事故の賠償金は高額になることが多いため、自賠責保険だけでは不十分であり、充実した任意保険への加入は、安全運転の責務の一部であると認識すべきです。


6. まとめ

今回の問題が示すのは、**「事故時の初期対応の順序」**が、命と責任の重さを分けるということです。

  • 最優先の鉄則: 後続事故の危険がある場合は、負傷者が頭部損傷であっても移動が最優先です。二次被害による死亡リスクを回避することが、究極の救護義務となります。
  • 初期対応の順序: 「救護(安全な場所へ移動含む)」→「危険防止(表示板)」→「警察報告」→「情報収集・保険連絡」の順序を徹底しましょう。
  • 事前の備え: 日頃の点検、停止表示器材の車載、そして任意保険への加入という二重の備えこそが、あなた自身の未来を守る最大の防御となります。