運転免許の学科試験に挑戦!「後退」が「通行禁止違反」になる瞬間
自動車を運転していて、目的の場所を通り過ぎてしまった時、「少しだけバックして戻ろう」と考えることがあるかもしれません。特に一方通行の道路では、対向車が来ないため、「バックなら大丈夫だろう」と安易に判断しがちです。
しかし、この**「バック(後退)」という行為が、実は道路交通法上の「通行禁止違反」や「逆走」に該当することをご存知でしょうか? 法律は、車両の進行方向を「前進」か「後退」かで区別せず、「禁止された方向に車体を動かす行為」**をすべて規制の対象とします。
本記事では、この日常に潜む違反行為の法的根拠を解説するとともに、その延長線上にある高速道路での故意の逆走事例を取り上げ、ルールを無視した一瞬の行動が、いかに命に関わる悲劇を招くかを、徹底的に掘り下げます。
1. 問題提起と回答:バックも逆走となる法的根拠
まずは、今回のテーマの核となる問題を確認しましょう。
問題:「一方通行を走行中、目的の場所を通り過ぎてしまったので、車をバックさせ目的の場所まで戻った。」
さて、この内容は
⭕️ 正しい
❌ 誤り
答え:❌ 誤り(バックであっても逆走は違反)
正解は ❌ 誤り です。
道路交通法上、一方通行の道路では、たとえバック(後退)であっても、進行が禁止されている方向に車を動かすことはできません。これは**「通行禁止違反」または「進入禁止違反」**となり、明確な交通違反です。
回答の根拠:道路交通法第8条
この義務は、道路交通法第8条に定められた「通行の禁止等」の規定に基づいています。
第8条 歩行者等又は車両等は、道路標識等によりその通行を禁止されている道路又はその部分を通行してはならない。
一方通行の道路は、道路標識により逆方向への通行が禁止されています。この「通行」には、前進だけでなく後退(バック)も含まれるため、バックでの逆走も許されないのです。規制の目的は、単に進行方向を定めるだけでなく、道路の危険を防止し、交通の安全と円滑を図ることにあります。
2. 基礎解説:バックが「逆走」となる法的根拠
一般道における一方通行の規制は、なぜそこまで厳格に後退まで規制するのでしょうか?
バック(後退)は「走行」の一種である
法律において、車両を操作して進路を変える行為は、すべて「走行」または「通行」として扱われます。前進であれ、後退であれ、禁止された方向に車体を動かしている事実に変わりはありません。
- 規制の必要性: もしバックでの逆走が許されると、ドライバーは「目的の場所を通り過ぎたらバックで戻ればいい」と安易に考え、その行為が後続車のドライバーや、予期せぬ自転車との接触事故を誘発する原因となります。
目的の場所を通り過ぎたらどうすべきか?
一方通行道路で目的の場所を通り過ぎてしまった場合の正しい対処法は、決してバックせずに前進を続けることです。
- 迂回: そのまま走行を続け、次の交差点などで迂回します。
- 正しい方向から再進入: 迂回した後、一方通行道路を正しい方向から進行して目的の場所に向かいます。
「少しの時間と燃料を節約したい」という安易な判断が、違反点数と罰金、そして事故リスクを招くことを理解すべきです。
3. 【高速道路の事例】故意の逆走事例が示す危険性
バックによる逆走の危険性は、高速道路という、より高速度で走行する特殊な環境において、さらに深刻な問題となります。
事例の概要:故意のバックが招く恐怖
2020年4月下旬に発生した高速道路の事例では、認知症ではない50歳代の男性ドライバーが、目的のICを通り過ぎてしまったため、意図的に高速道路の路肩に沿ってバックし始めたという事態が起こりました。
- 遭遇した車の状況: 後方から時速100km超で走行していた軽自動車のドライバーは、前方の車が突然バックしてきたことに気づき、寸前で衝突を回避しました。
- 招いた危険: 時速100km超の世界で、突然前方に停止または後退する車が出現することは、ドライバーの認知と制動が間に合わないことを意味し、多重追突事故につながる極めて危険な行為です。
故意の逆走の動機とドライバーの心理
この事例の背景には、「無謀なドライバー」というだけでなく、**「パニック」と「コスト意識」**が働いています。
- 動機: 目的のICを通り過ぎたことで、「時間と通行料金が無駄になる」という考えが先行し、パニック状態に陥った結果、ルールを無視した行動をとっさに取ってしまうのです。
- 年齢の問題ではない: 逆走事故は高齢ドライバーだけの問題ではなく、この事例のように65歳未満のドライバーによる「故意」の逆走も全体の約4割を占めています。
このエピソードは、誰でもパニックに陥る可能性があり、その一瞬の判断ミスが命に関わる悲劇を招くことを強く示唆しています。
4. 目的の場所を通り過ぎた場合の正しい対処法
一般道・高速道路を問わず、**バックによる逆走は「絶対にしない」**という鉄則を徹底するための正しい対処法を確認しましょう。
(1)高速道路(逆走絶対厳禁)での対処法
高速道路での逆走やバックは、命を落とす行為に他なりません。
- そのまま走行: 目的のICを通り過ぎてしまっても、絶対にバックやUターンはせず、そのまま走行し、次のICで降りてください。
- 料金所での申告: IC出口では一般レーンを利用し、料金所スタッフに間違えたことを申告します。
- 超過料金はかからない: 目的のICまで戻る方法をスタッフが案内してくれ、その際の通行料金は目的のICまでの料金で済むため、超過料金の心配は無用です。
NEXCO中日本でも、多くのICの出口に**「出口間違いは次のインターでお申し出ください」**という注意看板を設置し、ドライバーのパニックを防いでいます。
(2)一般道路(一方通行)での対処法
- 絶対厳禁: わずか数メートルであっても、バックで戻ることは通行禁止違反です。
- 正しい行動: Uターンが禁止されていない場所であれば安全を確認してUターンし、正しい方向から再度進行するか、そのまま走行し次の交差点で迂回してください。
5. 違反と罰則:バックによる逆走の法的責任
一般道の一方通行でバック(逆走)を行った場合、**「通行禁止違反」**に該当します。
| 違反区分 | 罰則(普通車) | 違反点数 |
| 通行禁止違反 | 9,000円 | 2点 |
高速道路での逆走は重大な刑事罰に
高速道路での逆走は、上記の通行禁止違反をはるかに超える重い罪に問われます。
- 妨害運転罪(あおり運転): 妨害目的の低速走行(逆走も含む)は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。
- 危険運転致死傷罪: 逆走によって事故を引き起こし、相手を死傷させた場合は、1年以上の有期懲役という極めて重い刑罰が科されます。
**「料金や時間が無駄になる」**という一瞬の判断ミスが、人生を左右する刑事罰につながることを、常に意識しなければなりません。
6. まとめ:焦りによる「一瞬のルール無視」が悲劇を招く
今回の問題は、**「バックも逆走であり、違反である」**というルールを明確に示しています。
- 原則: 一方通行では、前進・後退を問わず、禁止された方向への通行は一切許されません。
- 高速道路: ICを通り過ぎても、バックやUターンは絶対に厳禁。次のICで申告すれば超過料金はかかりません。
焦りやパニックによる**「一瞬のルール無視」**が、命に関わる悲劇を招きます。ドライバーは常に冷静な判断を心がけ、目的地への到着を急ぐよりも、安全を最優先するゆとりを持った運転を心がけましょう。


