白杖・高齢者に「減速」だけでは甘い!?道交法が要求する「徐行か一時停止」義務と4大保護対象の全知識

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学科試験問題集

運転免許の学科試験で頻繁に出題され、また実際の事故リスクに直結するのが、「特定の歩行者」に対する運転者の義務です。道路交通法は、歩行者保護を大原則としていますが、特に社会的弱者である特定の歩行者に対しては、運転者により重い警戒レベルを課しています。

今回の問題は、その**「義務のレベル」が問われるひっかけ問題です。単なる「減速」では不十分であり、より強い「徐行または一時停止」が義務付けられています。この言葉の重み**を理解することが、学科試験の合否と、実際の安全運転を分けます。

本記事では、道交法が定める保護対象の定義から、最も重い警戒レベルを示す「徐行」「一時停止」の義務までを徹底解説し、ドライバーの法的理解と安全意識を高めます。


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1. 問題提起と回答:義務は「減速」より重い

まずは、多くの受験者が勘違いしやすい問題から見ていきましょう。

問題:「白や黄の杖を持って歩いている人や、歩行補助者を使っていたり、その通行に支障のある高齢者が通行している場合には、あらかじめ手前で減速をして、これらの人が安全に通れるようにしなければならない。」

さて、この内容は

⭕️ 正しい

❌ 誤り


答え:❌ 誤り(義務は「徐行または一時停止」)

正解は ❌ 誤り です。

問題文は一見正しそうですが、**「減速」**という言葉を使っている点が間違いです。

  • 道交法が要求する義務: 道路交通法(第71条)が特定の歩行者に対して運転者に求める義務は、**「安全な間隔を保つか、徐行しなければならない」であり、安全な間隔が取れない場合は「一時停止」**することです。
  • 言葉の重み: 法律における「減速」と「徐行/一時停止」は、全く異なるレベルの警戒を意味します。この場合、「減速」では義務のレベルが不十分と判断されるため、問題文は誤りとなります。

2. 基礎解説:道路で特別な保護が必要となる対象

道路交通法が運転者に「徐行または一時停止」を要求する、特別な保護の対象となる歩行者は以下の通りです。これらの人々は、動作の予測が難しかったり、周囲の状況を把握しづらかったりするため、運転者が最大限の配慮をしなければなりません。

保護義務の対象となる特定の歩行者(4大パターンと幼児)

  1. 白や黄の杖を持つ人: 視覚に障害がある人を示します。白杖や黄杖は、運転者に対する「特別な注意が必要な歩行者」であることを知らせる重要な目印です。
  2. 盲導犬を連れた人: 視覚障害者を誘導する盲導犬を連れて歩いている人も、白杖を保持している人と同じく保護の対象です。
  3. 身体障がい者用の車いすで通行している人: 車椅子や電動車椅子(シニアカー)で通行している人、または歩行補助車(シルバーカーなど)を使っている人も含みます。これらの器具の使用者は、動きが遅く、急な方向転換が難しい場合があります。
  4. その通行に支障がある高齢者: 高齢であるというだけでなく、その通行に支障があると認められる人が保護の対象となります(例:足元がおぼつかない、荷物を多く持っているなど)。
  5. こどもがひとりで歩いている場合: 特に幼児は、予測不能な動き(突然走り出す、立ち止まる、向きを変えるなど)をする危険性が高いため、運転者は最大限の警戒を要します。

運転者に課される義務(徐行か一時停止)

これらの特定の歩行者の側方を通過するとき、運転者には以下の義務が課されます。

  • 徐行義務: 安全な間隔を保つか、それが難しい場合は徐行しなければなりません。
  • 一時停止義務: 安全な間隔を保つことも、徐行して安全に通過することも困難な場合は、一時停止して、これらの人が安全に通れるようにしなければなりません。

これらの義務の核心は、**「歩行者に不安を感じさせないこと」**です。接触を避けるだけでなく、歩行者が安全かつ快適に通行できるように配慮することが、道交法の精神です。


3. 応用解説:道交法の「言葉」が示す警戒レベル

道路交通法は、状況や危険度に応じて、運転者に求める注意の度合いを言葉で厳密に区別しています。この「言葉の重み」を理解することが、学科試験突破の鍵です。

運転者の義務(警戒レベル)の比較

道交法で使われる主な義務を示す言葉は、一般的に以下のように警戒レベルが重くなります。

警戒レベル義務の言葉意味と例
レベル① (軽度)気をつけて通行駐車車両の側を、安全な間隔を開けて通過できる時など。最低限の注意。
レベル② (注意喚起)注意して減速黄色の点滅信号、住宅街や商店街を通行する場合、悪天候時など。
レベル③ (厳重)徐行歩行者との間に安全な間隔を開けられない場合、乗降中の通学通園バスのそばを通る場合など。本問題の最低限の義務
レベル④ (最厳重)徐行または一時停止本問題の特定の歩行者への対応、人が渡るかわからない横断歩道を通過する場合、優先道路に入る場合など。
レベル⑤ (絶対)一時停止し安全確認横断歩道で歩行者が渡ろうとしている場合、踏切通過時、赤の点滅信号など。最も重い、絶対的な義務。

結論として、特定の歩行者に対する義務は「レベル④」に相当し、「減速(レベル②)」では明らかに不十分です。 この「言葉の違い」が、運転者が負う法的責任の重さを明確に分けているのです。


4. 法的義務と「善意の補助」の区別

特定の歩行者への保護は、法的義務だけでなく、ドライバーの思いやりが非常に重要になりますが、「どこまでが義務で、どこからが善意か」を区別しておくことも大切です。

法的義務は「安全確保」まで

法的な義務は、あくまで**「徐行か一時停止をして、これらの人が安全に通れるようにすること」**までです。これ以上の具体的な行動(例:車を降りて手を貸す、荷物を持ってあげる)は、法律で定められた義務ではありません。

善意の補助は安全配慮が必須

体の不自由な人や高齢者が道路の通行上お困りの場合、状況により車を安全な場所に停車させ、補助した方が良い場合もあるかもしれません。

しかし、これは法的な義務ではない「善意の補助」です。補助を行う場合は、以下の点に配慮してください。

  1. 自身の安全確保: 停車位置が後続車の迷惑や視界の妨げにならないか確認する。
  2. 交通の安全: ハザードランプを点灯するなど、自らも交通事故や交通トラブルの原因とならないよう配慮した上で補助してください。

5. まとめ

特定の歩行者に対する義務が**「減速」ではなく「徐行または一時停止」であるという事実は、道路交通法が「弱者保護」**の原則をどれほど重く見ているかを物語っています。

  • 義務の核: 罰則を避けるためではなく、視覚や動作に支障がある人々が不安を感じることなく、安全に道路を通行できるようにすることが、この義務の目的です。
  • 実践の鍵: 運転席に座る際は、常に**「思いやり」と「想像力」**を携帯してください。特定の歩行者が視界に入ったら、彼らの動きを予測しようとするよりも、一足早く徐行または一時停止をして、安全を最優先する姿勢こそが、真の安全運転です。

この知識を活かし、学科試験の突破と、日々の運転での安全確保に役立ててください。

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