本日は、運転免許を取得するための最初の関門、そして意外と多くの人がつまずく**「視力」**についてのお話です。
「視力なんて、メガネかコンタクトで矯正すれば大丈夫でしょ?」 そう思っている方も多いですが、実は取得する免許の種類によって、求められる基準は全く異なります。
特に、仕事で使うようなプロ免許(中型・大型・二種など)を目指す場合、その壁は一気に高くなります。 今回は、意外と知られていない視力の合格ラインと、先日当校にご相談に来られたお客様の実例を交えて、**「基準を満たせない場合の救済ルート(適性相談)」**について解説します。
1. 免許の種類別!必要な視力と「深視力」の壁
まず、ご自身が取りたい免許にどれくらいの視力が必要なのか、正確な数字を知っておきましょう。
① 普通自動車・自動二輪など
いわゆる一般的な免許です。
- 両眼で0.7以上
- かつ、片眼でそれぞれ0.3以上
【救済措置:片目が見えない場合】 もし、片眼の視力が0.3に満たない、もしくは見えない場合でも、諦める必要はありません。 もう片方の眼の視力が0.7以上あり、かつ視野が左右150度以上あれば、合格となります(視野検査が必要です)。
② 中型・大型・牽引・二種免許(プロ免許)
トラックやバス、タクシーなどを運転するための免許です。こちらは基準が厳しくなります。
- 両眼で0.8以上
- かつ、片眼でそれぞれ0.5以上
そして、プロ免許にはもう一つ、最大の難関があります。 それが**「深視力(しんしりょく)検査」**です。
▼ 深視力とは? 「三桿(さんかん)法」と呼ばれる検査器を使います。3本の棒が並んでいて、真ん中の1本だけが前後に動きます。 3本が一直線に並んだと思った瞬間にボタンを押し、そのズレが3回平均で2cm以内でなければなりません。 これは遠近感や立体感を測るもので、トラックの荷台をホームに付けたり、長い車体で交差点を曲がったりする際に不可欠な能力です。
この深視力が苦手な方が多く、なかなか合格できない、また、更新手続きができない方が多いです。深視力検査を担当したものであれば、絶対に思っているであろうことが、こんな検査やめてほしいと。それは、この検査で時間がかかることが多く他の仕事の時間が奪われているという特徴がある、また、苦手な方もなかなか改善ができず免許更新ごとに苦労されている方が圧倒的に多いのが特徴です。
【重要】プロ免許の厳しさ 普通免許とは異なり、中型以上の免許には「片眼が見えなくても視野があればOK」という特例が基本的にありません。 深視力は両眼の機能を使って立体を見るため、両眼がしっかり見えていないと合格できないのです。
2. 実録!「片目を瞑ると目線が泳ぐ」お客様の事例
先日、当校に中型一種免許(4トン車などが運転できる免許)の取得をご希望のお客様がいらっしゃいました。
入校前の視力確認を行ったところ、少し特殊な状況であることがわかりました。 そのお客様は、**「両眼を開けていればハッキリ見えるが、片目を瞑ると、開けている方の目の焦点が合わなくなってしまう」**という症状をお持ちでした。
具体的には、片目を遮眼子(しゃがんし)で隠すと、もう片方の目が泳いでしまい(眼振のような状態)、視力検査の「C」のマークが判別できなくなってしまうのです。
指導員としての苦渋の判断
中型免許の基準は**「片眼でそれぞれ0.5以上」**です。 両眼で見れば視力は十分で、深視力も見えているようでしたが、法律上、それぞれの眼の視力を測定して記録しなければなりません。
教習所の設備では、片目を隠して測定する方法しかなく、このままでは「視力条件を満たさない」として、入校をお断りせざるを得ない状況でした。
しかし、ご本人は日常生活で支障なく見えており、運転への意欲も高い。 そこで私は、門前払いにするのではなく、ある場所へ行っていただくよう提案しました。
それが、**運転免許試験場での「適性相談(適格審査)」**です。
3. 諦めないで!「適性相談(安全運転相談)」とは?
教習所はあくまで「運転を教える場所」であり、法的に免許を与えられるかどうかを最終判断する場所ではありません。 その判断を下すのは、国の機関である公安委員会(警察)です。
各都道府県の運転免許センター(試験場)や警察署には、**「運転適性相談窓口(安全運転相談)」**という無料の相談窓口が設置されています。
どんな人が相談に行くの?
- 視力や聴力に不安がある方
- 身体に障がいがある方(手足の欠損や麻痺など)
- 一定の病気(てんかん、統合失調症など)の既往歴がある方
ここでは、専門の職員や医療従事者が、より精密な検査や面談を行い、 「免許取得が可能か」 「条件付き(AT限定や補助装置の使用など)なら可能か」 を判断してくれます。
例えば、片手が義手の方でも、ハンドルに旋回ノブを付けることを条件に免許が取れるケースもあります。
今回の「片目を瞑ると焦点が合わない」というお客様の場合も、試験場の専門的な検査機器や医師の判断であれば、 「両眼視機能が正常であれば、安全な運転に支障なし」 というお墨付き(適格判定)がもらえる可能性があります。
4. まとめ:可能性はゼロじゃない
もし、この記事を読んでいる方の中に、視力や身体的な事情で「自分は免許が取れないかも」と悩んでいる方がいたら、自己判断で諦める前に、ぜひお近くの**運転免許センターの「安全運転相談(適性相談)」**に問い合わせてみてください。
教習所の視力計では測りきれない部分を、しっかりと審査してくれます。 そこで「入校許可」が出れば、私たちは喜んで教習を引き受けさせていただきます。
追記をお待ちください
今回ご相談にいらっしゃったお客様については、現在、試験場での審査結果待ちの状態です。 もし「入校可能」という判定が出て、無事に中型免許への挑戦が始まった暁には、個人が特定されない範囲で、このブログにて追記・ご報告させていただきたいと思います。
道は一つではありません。 安全運転ができる能力と意思があれば、きっと扉は開きます。


