高速道路を走っていて、こんな光景を見たことはありませんか? 追い越し車線(一番右の車線)を、制限速度きっかりで延々と走り続ける車。 後ろから速い車が近づいてきても、「私は制限速度(100km/h)を守っているんだから、退く必要はない! スピードを出している後ろの車が悪いんだ!」と言わんばかりにブロックし続ける……。
この「正義感」あふれるドライバーさん。 はっきり言います。 残念ながら、あなたも警察に捕まります。
今回は、高速道路のトラブルメーカーになりがちな**「追越車線の居座り」と、それに腹を立ててやってしまいがちな「左側からの追い越し」**について、法律の観点から白黒つけたいと思います。
1. 導入:その「右側走行」、実は違反です
「制限速度で走っているのに、パトカーに止められた」 そんな話を聞くと、理不尽だと思うかもしれません。しかし、道路交通法には「速度」とは別に、**「走るべき場所」**のルールが存在します。
高速道路の一番右側の車線(追越車線)を、追い越しが終わった後も走り続ける行為。 これは**「車両通行帯違反」**という立派な交通違反です。 (違反点数1点、反則金6,000円 ※普通車)
「後ろの車が煽ってくるのが悪い」 その気持ちは分かりますが、法律上は**「居座っているあなたも悪い」**のです。
2. 車が走るべき車線と「キープレフト」
日本の道路交通法(第20条)には、**「キープレフト(左側通行)の原則」**があります。 車は基本的に、一番右の車線(追越車線)を空けて、その左側の車線(走行車線)を走らなければなりません。
右側を走っていいのは「2つの例外」だけ
高速道路の一番右の車線を走っていいのは、以下の時だけです。
- 追い越しをする時
- 渋滞などでやむを得ない時 (標識や工事で指定されている場合なども含む)
つまり、**「追い越しが終わったのに左に戻らない」こと自体が違反なのです。 これに「速度」は関係ありません。あなたが時速80kmだろうと100kmだろうと、「追い越しが終わったら速やかに左に戻る」**のがルールです。
「2km」走り続けたらアウト?
法律に「何メートル走ったら違反」という明確な数字はありませんが、警察の取り締まり基準としてよく言われるのが**「約2km」**という目安です。 追い越しが終わっているのに、漫然と2km以上右側を走り続けると、覆面パトカーのサイレンが鳴る可能性が高いと思ってください。
3. 知らない人が多すぎる「追いつかれた車両の義務」
さらに、もう一つ重要な法律があります。 **「追いつかれた車両の義務(道交法第27条)」**です。
これは、「自分より速度の速い車に追いつかれた時は、速度を上げてはならないし、できる限り進路を譲らなければならない」という義務です。
ここでよく議論になるのが、 「相手が制限速度を超えている(スピード違反)場合でも、譲らなきゃいけないの?」 という点です。
答えは「YES」です。
相手がスピード違反をしているかどうかを取り締まるのは、警察の仕事です。一般ドライバーであるあなたが、実力行使でブロックしていい権限はありません。 法律上、後ろから速い車が来たら、すみやかに道を譲る義務があなたにはあります。 これを怠ると「追いつかれた車両の義務違反」となります。
「正義マン」になってブロックし続けることは、あおり運転を誘発するだけでなく、あなた自身も法を犯していることになるのです。
4. 怒りの「左側追い越し」はもっと危険!
さて、ここからは「追いついた側」の話です。 前を走る車がなかなか退いてくれない。パッシングしても気づかない。 イライラして、**「もういい! 左から抜いてやる!」**と、走行車線(左側)へ車線変更し、一気に加速して追い抜いていく……。
これ、気持ちは分かりますが、非常に危険で、かつ検挙されるリスクが高い行為です。
追い越しは「右側」から!(道交法第28条)
法律では、「追い越しは、前車の右側を通行しなければならない」と定められています。 左側の車線を使って、前の車を追い越す行為は**「追い越し違反」**になります。 (※車線変更をせずに、元々左側を走っていた車が、結果的に右側の車より前に出る「追い抜き」とは区別されますが、進路変更を伴う左側からの追い越しはアウトです)
「どっちが悪い?」の現実
- 居座り車: 通行帯違反、追いつかれた車両の義務違反。
- 左から抜く車: 追い越し違反、安全運転義務違反。
法的には「どっちも悪い」のですが、高速道路の現場では、危険な挙動(急な車線変更や左側からの加速)をした側が目立つため、警察に捕まりやすい傾向があります。 せっかく相手が違反をしているのに、それに腹を立てて自分が捕まってしまっては、元も子もありません。
5. まとめ:正義マンにならず、大人の運転を
高速道路の追越車線は、あなたのための指定席ではありません。 あくまで**「追い越すための一時的な借り物」**です。用が済んだら、すぐに返しましょう(左に戻りましょう)。
- 制限速度を守っているからといって、右側を走り続けるのは違反。
- 後ろから速い車が来たら、意地を張らずに譲るのが義務。
- 左から抜くのは危険だし、捕まりやすいので我慢。
変な車やマナーの悪い車がいても、関わらずに先に行かせる(譲る)のが、トラブルを回避する一番賢い選択です。 「お先にどうぞ」ができるドライバーこそ、真の運転上手ですよ。

