【大論争】AT車の「左足ブレーキ」はアリかナシか?F1気取りに物申す…教習所指導員が出した「意外な結論」とは

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運転上達の秘訣
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1. なぜ教習所は「右足ブレーキ」しか教えないのか

まず前提として、私が教習生に運転を教える際、**100%「右足ブレーキ」**で指導します。左足ブレーキを推奨することは絶対にありません。教習生が左足でブレーキを踏もうとしたら、即座に修正させます。

もし教習生に「なぜ左足でブレーキを踏んではいけないのですか? F1みたいでカッコいいのに」と聞かれたら、私は明確に以下の2つの理由を答えます。

理由①:マニュアル車(MT)との互換性

車はオートマチック車(AT)だけではありません。 マニュアル車の場合、左足は「クラッチペダル」を操作するために存在します。もし「AT車は左足ブレーキ、MT車は左足クラッチ」と使い分けていると、とっさのパニック時に脳が混乱します。 急ブレーキを踏むつもりで、左足がクラッチを踏む動作(床まで踏み抜く)をしてしまったら? あるいはその逆は? 車種によって操作体系をガラリと変えるのは、ヒューマンエラーの温床になります。

理由②:「フットレスト」という安全装置

こちらの方がより重要です。 運転席の足元、一番左側には「フットレスト(足置き)」があります。これはただの飾りではありません。 カーブを曲がる時や急ブレーキをかける時、ドライバーは左足をフットレストに強く押し付けることで体を支え、姿勢を安定させています。

もし左足を常にブレーキペダルの上に浮かせて構えていたらどうなるか。

  • 不安定: 体を支える「突っかい棒」がないため、姿勢が崩れやすくなります。
  • 踏ん張れない: いざ急ブレーキが必要な時、踏ん張りが効かず、慣性で体が前にズレて適切な操作ができなくなる恐れがあります。
  • 疲労: 常に左足を持ち上げている状態は、筋肉への負担も大きく、疲労の原因になります。

「左足ブレーキの方が反応が速い」という主張もありますが、姿勢が安定せず、疲労が溜まった状態での反応速度が本当に正常かと言えば、疑問が残ります。 だからこそ、教習所では「左足はフットレストで体を支える」ことを基本として教えているのです。


2. それでも私が「左足ブレーキ」を否定しない理由

では、なぜ冒頭で「お好きなようにどうぞ」と言ったのか。 それは、私が担当している**「高齢者講習」**の現場に理由があります。

実は、高齢者ドライバーの中には、長年「左足ブレーキ」で運転してこられた方が少なからずいらっしゃいます。 何十年もそのスタイルで、無事故無違反でやってきた方々です。

もし私が教則本通りに、「左足ブレーキは危険ですから、今日から右足に変えてください」と指導したらどうなるでしょうか。 70代、80代になってから、体に染み付いた「数十年の癖」を矯正するのは至難の業です。 無理に矯正させた結果、 「どっちの足だっけ?」 とパニックになり、かえって事故を起こすリスクが跳ね上がります。

「変えることのリスク」が「続けることのリスク」を上回る場合、あえて注意はしません。 その人がそのスタイルで安全に止まれるなら、それがその人にとっての正解だからです。

私の知人にも、サーキット走行を趣味にしているドライバーがいますが、彼は普段の運転でも左足ブレーキを使っているそうです。理由を聞いても明確な答えはありませんでしたが、彼なりに突き詰めたスタイルなのでしょう。 プロレベルで車の挙動を理解し、自分の体をコントロールできる人が、独自のスタイルを持つことを否定するつもりはありません。


3. 本当の恐怖は「右足ブレーキ」の中に潜んでいる

私がこの議論で一番伝えたいのは、実は「左足か右足か」ではありません。 もっと恐ろしいのは、「右足ブレーキ派」の中に潜んでいる、ある危険な踏み方です。

皆さんは、右足でブレーキを踏む時、どうやって踏んでいますか? 大きく分けて2つのスタイルがあります。

  1. ニー(膝)アクション式(基本): 踵(かかと)を床から浮かせ、膝の上下運動を使ってペダルを真上から踏む方法。教習所ではこれを教えます。
  2. ワイパー式(危険): 踵を床につけたまま、踵を支点にして、つま先だけをワイパーのように左右に振ってアクセルとブレーキを踏み変える方法。

実は、後者の**「ワイパー式」こそが、高齢者のペダル踏み間違い事故の元凶**になっていると私は考えています。

なぜ「踵をつけたまま」が危険なのか?

車の構造上、アクセルペダルよりもブレーキペダルの方が**「高い位置(手前)」**に設置されています。 若い頃は足首が柔らかいので、踵を床につけたままでも、つま先をグイッと持ち上げてブレーキペダルまで届きます。

しかし、高齢になるとどうなるか。 足首が硬くなります(背屈制限)。 踵をつけたまま、高い位置にあるブレーキペダルまでつま先を持ち上げようとしても、足首が曲がらず、上がりきらないのです。

その結果、何が起きるか。

  • ブレーキペダルの「側面」に靴が引っかかる。
  • ブレーキを踏んだつもりで、つま先がブレーキペダルの下(または横)にあるアクセルペダルを踏んでしまう。

これが「ブレーキを踏んでいるつもりで加速した」という事故の物理的なメカニズムの一つです。

だからこそ、教習所では**「ブレーキを踏む時は、一度足を持ち上げて(踵を浮かせて)、上から踏む」**という操作(ニーアクション)を基本としています。 これなら足首が硬くても、確実にブレーキペダルを捉えることができ、踏み間違いは起きにくくなります。


4. まとめ:スタイル論争よりも「意識」の問題

「左足ブレーキ論争」をしている暇があったら、自分の右足がどう動いているかを確認した方が、よほど事故防止になります。

私は仕事柄、基本通りの操作をしますが、長距離運転で疲れた時など、状況に応じて足のポジションを微調整することはあります。 それは「基本」を熟知した上での「応用」であり、自分が今、どのペダルをどう踏んでいるかを100%意識できているからです。

一般のドライバーの方にお伝えしたいのは、「こうでなければならない」という固定観念で他人を攻撃するのではなく、「自分の身体機能」と「車の構造」を理解して運転していますか? ということです。

  • 高齢になって足首が硬くなっているのに、若い頃と同じ「ワイパー式」で横着な踏み変えをしていませんか?
  • 左足ブレーキを使うなら、フットレストを使えない分の不安定さをどうカバーしていますか?

長年培ってきた無意識のスタイルと、現在の身体機能の間にギャップが生まれた時、事故は起きます。 左足でも右足でも構いません。 重要なのは、漫然と運転するのではなく、**「今、自分は確実にブレーキを踏もうとしている」**と意識的に操作を行うこと。 その「意識」こそが、どんな高等テクニックよりも勝る安全装置なのです。

結論。 左足ブレーキ論争については、「あなたの責任において、お好きなようにどうぞ」。 ただし、もしこれから免許を取る人や、運転を見直したい人がいるなら、私は迷わず**「基本通りの右足操作(踵を浮かせて踏む)」**をお勧めします。それが最も生理的に無理がなく、ミスが少ない方法だと、歴史が証明しているからです。