第1章:運命の分かれ道「修了検定」とは
まず、修了検定の基本ルールを押さえておきましょう。
1. 持ち点100点からの減点方式
修了検定は、スタート時点で全員が「100点」持っています。そこからミスをするたびに減点されていき、ゴールした時点で**「70点以上」**残っていれば合格です。(※中型・大型免許などは60点合格ですが、普通車は70点です)
逆に言えば、30点まではミスができるということ。 完璧な運転を目指す必要はありません。「合格ラインに残ればいい」と少し肩の力を抜いてください。
2. 「検定中止」と「完走」の違い
ここが非常に重要です。 運転免許試験場(一発試験)での技能試験では、脱輪などの「検定中止(一発アウト)」項目に該当した場合、その場で試験終了となり、発着点へ戻されます。 しかし、指定自動車教習所で行う検定では、たとえ不合格が確定していても、基本的には最後までコースを走らせてもらえます。 (※暴走など危険行為があった場合は別です)
つまり、「最後まで完走できた=合格」ではありません。 ゴールして「お疲れ様でした」と言われても、実は途中で不合格になっていた、というケースは多々あります。 逆に、途中で大きなミスをして「あ、落ちたかも…」と思っても、意外と点数が残っていて合格していることもあります。 「最後まで諦めないこと」、そして**「最後まで油断しないこと」**。これが鉄則です。
第2章:恐怖のリスト「一発アウト(検定中止)」になる8つの地雷
検定員が最も目を光らせているのが、即座に検定終了(不合格)となる危険行為です。 これらは点数に関係なく、1回でもやってしまえばアウトです。 特に多い順に解説します。
1. 脱輪大(だつりんだい)
これが不合格原因のNo.1です。 S字コースやクランクコース、交差点の曲がり角などで、タイヤが縁石に乗り上げてしまうこと。 さらに、「乗り上げたまま1.5m以上進んでしまう」、または**「コース外(縁石の向こう側)に完全に落ちて走行する」**と、脱輪「大」となり中止です。
- 対策: 乗り上げたり、落ちそうになったりしたら、すぐにブレーキを踏んで止まること。そのまま進まなければ「中止」にはなりません。
2. 接触大(せっしょくだい)
ポールやガードレール、縁石などの障害物に車体を強く接触させてしまうこと。 「ガリガリッ」といった音が出るような接触や、バンパーが大きく歪むような接触は一発アウトです。
- 対策: こちらも「ぶつかる!」と思ったら手前で止まる勇気が重要です。
3. 一時不停止・踏切不停止
「止まれ」の標識がある場所や、踏切の手前。 ここで**「タイヤが完全に停止(回転が止まる)」**していないと中止です。 自分では止まったつもりでも、車体がジワジワ動いていたらアウト(徐行扱い)です。
- 対策: 停止線で止まったら、心の中で「1、2」と数えるくらいの余裕を持ちましょう。
4. 信号無視
赤信号はもちろんですが、**「黄色信号」**の判断ミスも命取りです。 「行けるかな?」と思って加速し、交差点進入時に赤になってしまったらアウト。 また、赤信号で停止線を超えて止まってしまうのも信号無視扱いで中止になります。
5. 進行妨害
優先道路を走っている車や、対向直進車がいるのに、無理に右折や合流をして相手にブレーキを踏ませたり、避けさせたりした場合です。 検定員が「危ない!」と感じて補助ブレーキを踏んだ場合も、この項目で中止になります。
6. 逆行大(ぎゃっこうだい)
坂道発進などで失敗し、車が1メートル以上後ろに下がってしまうこと。 または、下がる距離が短くても、何度も下がって合計1メートルを超えた場合。 さらに危険なのは、「Dレンジに入れるべきところをRに入れてアクセルを踏んだ(ギア間違い)」場合で、後ろに車がいるなど危険な状態なら即中止です。
7. 通過不能・発進不能
- 通過不能: S字やクランクで、通り抜けるために4回以上切り返し(やり直し)をした場合。
- 発進不能: 同じ場所でエンストを4回以上した場合。または、発進できるのに緊張などでパニックになり、長時間発進できない場合。
8. 指示違反
検定員の指示に従わず、それによって危険が生じた場合。 単に道を間違えただけでは減点されませんが、例えば「ここを右折」と言われているのに、直進レーンから無理やり右折しようとするなどの危険行為は中止対象です。
第3章:知っておかないと落ちる?「減点細目」の真実
一発アウトを免れても、細かい減点が積み重なって70点を下回れば不合格です。 知らず知らずのうちに点数を失っているポイントを紹介します。
【5点減点】ちりも積もれば山となる
一見軽いミスですが、積み重なると痛いです。
- 巻き込み離れ・右左折方法違反: 左折時に左へ寄せきれていない(バイクが入れる隙間がある)、右折時に道路中央に寄っていない。また、左折しようとしているのにハンドルを一度右に振る(あおりハンドル)行為。
- 措置不適当: エンジン始動時にブレーキを踏んでいない、ミラーを合わせていない、ハンドブレーキを戻し忘れて発進しようとするなど。
- 停止措置不良: ゴール地点で、路端から30cm以上離れている。または停止目標ポールから前後30cm以上ズレている。Pレンジに入れ忘れているなど。
- 脱輪小: 縁石にタイヤが「軽く接触」すること(乗り上げはしない)。
- 特別減点(合図不履行など): ウインカーを出すのが遅い、消し忘れ、出さない。これらは「1回目は見逃し、2回目で減点」という特別ルールが適用されることが多いですが、何度もやると減点されます。
- エンスト: 1回〜3回までは減点で済みます。
【10点減点】これを2回やると合格は厳しい
ここからは大きな減点です。特に「安全確認」は要注意です。
- 各種安全不確認: これが最も減点されやすい項目です。
- 発進時の周囲確認
- 進路変更時のミラー・目視確認
- 交差点進入時の左右確認
- 左折時の巻き込み確認 これらを怠ると、1回につき10点減点。3回やればマイナス30点で、合格ラインギリギリです。
- ふらつき・急ハンドル: S字などでハンドル操作が荒い、直線でフラフラしている。
- 速度維持不能・速すぎ小: 指示速度(40km/hなど)が出せない。または、状況に対して少し速すぎる。
- 優先判断不良: 優先車がいるのに進行した(相手にブレーキを踏ませるほどではないが、判断として甘い場合)。
【20点減点】ほぼ致命傷の重いミス
これを1回でもやると、あと10点しか余裕がなくなります。
- 脱輪中(だつりんちゅう): タイヤが縁石に乗り上げたが、1.5m未満で停止した場合。 ※ここで止まれれば「中止」ではなく「20点減点」で済みます!ここが運命の分かれ道です。
- 接触小: ポールなどに軽く接触した場合(強くぶつかれば接触大で中止)。
- 逆行中: 坂道などで0.5m以上1m未満下がった場合。
- 速度超過: 指定速度を大きく超えて走行した場合。
第4章:検定員直伝!合格を手にする「3つの秘訣」
では、これらの減点を回避し、合格するためにはどうすればいいのか。 技術だけでなく、検定員がチェックしている「勘所」をお教えします。
秘訣①:技術に関係のないミスは「ゼロ」にする
運転技術(ハンドル操作やブレーキ感覚)は、緊張で狂うことがあります。 しかし、「止まる」「見る」「出す」は、意識さえすれば誰でもできます。
- 一時停止線では、誰が見ても止まったとわかるように止まる。
- ウインカーは早めに出す。
- そして最大のポイントは**「安全確認のアピール」**です。
検定員は、あなたの目線までは完全に見えません。 目でチラッと見ても、検定員が「見ていない」と判断すれば、容赦なく10点減点されます。 交差点や巻き込み確認では、**「わざとらしいくらいに首を振って」**確認してください。 これは演技ではありません。「私は安全意識が高いドライバーです」というアピールであり、合格への近道です。
秘訣②:ミスした時の「リカバリー術」を準備する
不合格になる人の多くは、ミスをした瞬間にパニックになり、さらに大きなミス(中止行為)を犯します。 特に多いのがS字・クランクでの失敗です。
- 乗り上げたら、すぐ止まる! 「あ、縁石に乗った!」と思ったら、0.1秒でブレーキを踏んでください。 1.5m進む前に止まれば「脱輪中(20点減点)」で済みます。まだ合格できます。 そのまま「行けるかも」と進んでしまえば「脱輪大(中止)」で終わりです。
- 正しくやり直す 止まったら、落ち着いてバック(切り返し)をしましょう。切り返しは1回なら減点されません(教習所によりますが、一般的に1回目はサービスされることが多いです)。4回までなら中止にはなりません。
「ミスをしない」ことより「ミスしても中止にならない対応をする」ことが、合格の鍵です。
秘訣③:魔の「右左折」をルーティン化する
交差点の右左折は、やることが多くてパニックになりやすい場所です。 以下の手順を呪文のように覚えて、体に染み込ませてください。
- 30m手前で合図(ウインカー)
- ルームミラーとドアミラーを確認
- 目視で死角を確認(ここ重要!)
- 30m手前で寄せる(左折は左へ、右折は中央線へ)
- 交差点進入前に左右安全確認(首振り)
- 徐行で曲がる
- 左折時は巻き込み確認(もう一度目視!)
この手順のどれか一つでも抜けると減点対象です。 特に「寄せ」と「巻き込み確認」は忘れがちなので注意しましょう。
第5章:禁断の裏話…検定員が「合格させたくなる」運転とは
最後に、採点基準には載っていない、検定員の「心理」についてお話しします。 検定員も人間です。ロボットではありません。 もちろん基準に則って厳正に採点しますが、心証が良い受検者とそうでない受検者では、際どい判定の時に……というのは人間心理としてあり得ます。 (※もちろん、不正な採点はしませんが、「迷ったら厳しく見る」か「迷ったら様子を見る」かの差に出ることがあります)
1. 返事はハッキリと「はい!」
検定員が「次の信号を右です」と指示したとき。 無言の受検者は、本当に聞こえているのか、理解しているのか不安になります。 不安な運転には、検定員も身構えてしまい、補助ブレーキへの足が近づきます。 大きな声で「はい!」と返事をするだけで、車内の空気は良くなり、検定員も安心して採点できます。
2. 確認は「顔」でおこなう
先ほども言いましたが、安全確認を目だけで行う人がいます。 これは検定員からすると「確認していない」と見なされるリスクが高いだけでなく、「自信がなさそう」「周りが見えていなさそう」という悪い印象を与えます。 **「顎(あご)を肩に乗せる」**くらいの気持ちで大きく顔を向けましょう。 「あ、この子はしっかり見ているな」と思わせれば、検定員の信頼を勝ち取れます。
3. メリハリのある運転を!
実はこれが一番重要かもしれません。 「慎重に走ろう」とするあまり、40km/h道路を20km/hでトロトロ走る人がいます。 これは「安全運転」ではなく**「円滑な交通を妨げる運転」**として減点対象になります。 また、検定員も人間ですから、意味もなく遅い運転にはイライラします。
- 直線の見通しの良い道路では、指定速度(制限速度)までしっかり出す。
- カーブや交差点の手前では、しっかり減速する。
この「出す・落とす」のコントラスト(メリハリ)がついている運転は、非常に上手に見えます。
私自身の恥ずかしい話をしましょう。 私が運転免許試験場で「大型二輪」の試験を受けた時のことです。 完璧にコースを走り切り、「これは合格しただろ!」と自信満々で発着点に戻りました。 しかし、試験官から告げられたのは「不合格」。 理由は**「メリハリがない」**でした。 「君の運転は、ただ慎重なだけで、大型バイクを操れていない。加速すべきところで加速しないと、交通の邪魔だよ」と。 プロを目指す私ですら、慎重になりすぎて落とされたのです。
皆さんも、ビビらずにアクセルを踏むべきところは踏んでください。それが「運転できる人」の証です。
まとめ:自信を持って挑もう
修了検定は、落とすための試験ではありません。 「路上に出ても安全に練習できるか」を確認するための試験です。
100点満点を取る必要はありません。 多少脱輪しかけても、止まってやり直せばいいのです。 エンストしても、落ち着いてエンジンをかけ直せばいいのです。
一番大切なのは、**「安全に対する意識」**です。 技術が未熟でも、確認をしっかり行い、危ないと思ったら止まる判断ができる人は合格します。
この記事を読んだ皆さんが、その手に「仮免許」を掴み取ることを、心から応援しています。 検定員は、助手席であなたの成長を見ていますよ。頑張ってください!


