突然ですが、質問です。 あなたは今、スマホや地図を一切見ずに、職場や学校から自宅まで歩いて帰れますか?
「そんなの、スマホの地図アプリを見ればいいだけじゃないか」 そう思われるかもしれません。 しかし、もし災害で電波が繋がらなくなったら? モバイルバッテリーが売り切れて、充電が切れてしまったら?
今日は、私が教習所指導員として勤務していた時に経験した「東日本大震災(3.11)」の記憶と、そこから学んだ「道を覚えること」の重要性についてお話しします。
あの日、首都圏の道路で起きたこと
2011年3月11日。 あの日、私は首都圏にある某教習所で業務にあたっていました。 大きな揺れの後、電車は完全にストップ。 夜21時まで勤務した後、電車通勤の職員は「教習車を使って帰宅しても良い」という許可が出たため、私も車で帰路につきました。
自宅までは20km以上の道のり。普段なら車で1時間強あれば着く距離です。 しかし、その日の道路状況は異様でした。
信号が止まっている箇所もあり、道路は車で埋め尽くされ、全く動きません。 結局、自宅にたどり着くまでに4時間以上かかりました。
そして、車窓から見た光景は今でも忘れられません。 歩道には、電車が動かないために「歩いて帰宅する」ことを選んだ人々が溢れかえっていました。 中には、地図も持たず、ただ前の人の波について歩いているだけのように見える人もいました。
私の知人は、夕方に会社を出て、自宅に着いたのが翌朝の6時だったそうです。 携帯電話も繋がりにくく、家族の安否もわからない中、暗闇を歩き続ける不安は計り知れません。
もし、この状況でスマホの充電が切れたら。 あなたは、自分の足で、正しい方向へ進むことができますか?
現代病?「カーナビ依存」のリスク
かつて、スマホやカーナビが一般的ではなかった時代、私たちは紙の地図を頼りに、頭の中にルートを描いて運転していました。 しかし現在はどうでしょうか。
「カーナビがないと、隣町のスーパーにも行けない」 そんなドライバーが増えているように感じます。
もちろん、カーナビは素晴らしい文明の利器です。
- 一瞬でルートを決めてくれる
- 到着予想時刻がわかる
- リアルタイムで渋滞を教えてくれる
あまりにも便利すぎて、手放せない存在であることは間違いありません。 しかし、指導員としては、その**「デメリット」**についても強く警鐘を鳴らしたいのです。
カーナビに頼りすぎることの弊害
- 事故の誘発: 地図画面を注視することによる「前方不注意」は、事故原因の上位です。
- 方向感覚の喪失: 「次の信号を右です」という指示に従うだけなので、自分が「北に向かっているのか南に向かっているのか」すらわからなくなります。
- 情報のタイムラグ: 工事による通行止めや、災害時の規制情報は、カーナビに即座に反映されないことがあります。
- バッテリーへの依存: これが最大のリスクです。スマホナビの場合、充電が切れれば、その瞬間に「迷子」になります。
「道を覚える」ことは最強の安全対策
私は、「道を覚えること(脳内地図を作ること)」にデメリットは一つもないと考えています。 カーナビの弱点を全て補い、さらに安全運転にもつながるからです。
私が学生の頃は、アルバイトで首都圏中を車で走り回っていました。 最初は地図が手放せませんでしたが、経験を積むうちに、地名を言われるだけで「方角・距離・所要時間」が頭に浮かぶようになりました。
頭の中に地図があると、何が良いのか。 それは、**「迷わない」**ということです。
「この先どう行くんだっけ?」と迷いながらの運転は、注意力が散漫になります。 道を知っていれば、運転操作や周囲の安全確認に100%の意識を向けることができます。つまり、道を覚えることは、事故防止の特効薬でもあるのです。
指導員直伝!迷った時の「アナログ生存術」
最後に、私が若い頃、知らない住宅街に迷い込んだ時に実践していた**「現在地把握のテクニック」**をご紹介します。 カーナビが壊れた時や、災害時にスマホが使えなくなった時のために、知っておいて損はありません。
ただし、これを行うには一つだけ条件があります。 **「自宅周辺や、その地域の主要な『大通り』の名前と位置関係を知っていること」**です。
1. 太陽と月で方角を知る
基本中の基本ですが、太陽は東から昇り、西に沈みます。 そして夜間、もし月が出ていればラッキーです。 私がよくやっていたのは、**「ひたすら月に向かって走る(歩く)」**ことでした。
なぜか? 月に向かって走れば、少なくとも「一定の方向」に進み続けることができます。 迷っている時に一番怖いのは、同じ場所をグルグル回ってしまうこと。 一定方向に進み続ければ、いずれ必ず知っている**「大通り」**にぶつかります。大通りに出れば、標識を見て現在地を把握できるからです。
2. 「ベランダ」は天然のコンパス
太陽も月も出ていない曇りの日。住宅街で方角がわからなくなった時。 そんな時は、**「家のベランダ」**を見てください。
日本の住宅の多くは、洗濯物を干すために**「ベランダを南向き」**に作っています。 また、屋根に乗っているソーラーパネルや、BSアンテナも南(南西)を向いています。
「あっちが南か」とわかれば、北にある大通りを目指して脱出することができます。
まとめ:備えあれば憂いなし
カーナビは便利ですが、あくまで「補助ツール」です。 いざという時、あなたと家族を守るのは、あなた自身の頭の中にある「脳内地図」かもしれません。
次の休日は、あえてカーナビの電源を切って、知っている道を走ってみませんか? 「あ、ここにはこんな看板があったんだ」 そんな発見をしながら道を覚えることは、意外と楽しいものですよ。
備えあれば憂いなし。 アナログな力を磨いて、安全なカーライフ(そして災害への備え)を送ってください。

