いよいよ今週末、1月17日(土)・18日(日)は「大学入学共通テスト」の本番ですね。 受験生ご本人はもちろん、サポートしてこられた親御様にとっても、緊張のピークを迎えていることとお察しします。
天気予報では、地域によっては寒波や雪の予報もちらついています。 そんな時、親心としてふと頭をよぎるのが、こんな考えではないでしょうか?
「寒い中、歩かせるのは可哀想だ」 「電車が遅れるかもしれないし、車で送ってあげたほうが確実じゃないか?」 「車なら暖かいし、リラックスして会場に入れるはず」
そのお気持ち、痛いほどよく分かります。ここまで頑張ってきた子供に、最後くらいは快適な環境を用意してあげたいですよね。
しかし、長年、交通安全の最前線にいる現役の教習所指導員として、あえて厳しいことを言わせてください。
「基本的には、試験当日の車送迎は絶対にやめるべきです」
良かれと思って出したその車が、お子さんの受験を台無しにする「凶器」や「檻」になってしまうリスクが、皆さんが想像している以上に高いからです。 なぜ、プロがそこまで止めるのか。その理由と、それでもどうしても送らなければならない場合の「リスク回避策」について、緊急解説します。
理由①:不慣れな道 × 親のプレッシャー = 事故の法則
「私は運転歴20年のベテランだから大丈夫」 そう思っているお父さん、お母さんこそ危険です。
普段、近所のスーパーや通勤路を走るのと、試験当日の送迎は、状況が全く異なります。 まず、親御さん自身が**「絶対に遅刻させてはいけない」という極度のプレッシャー**を感じています。
「焦り」が招く視野狭窄
人間は焦ると、脳の仕組みとして視野が極端に狭くなります(視野狭窄)。 普段なら気付ける標識、飛び出し、一時停止などが、緊張と焦りで見えなくなってしまうのです。
さらに、試験会場となる大学周辺の道路は、普段走り慣れていない道であることがほとんどです。
- 突然の一方通行
- 複雑な五差路
- 狭い住宅街の路地
これらが組み合わさった時、事故のリスクは跳ね上がります。
「コツン」でもアウトです
もし、軽い接触事故を起こしてしまったらどうなるでしょう? 怪我がなくても、警察を呼んで、現場検証をして……最低でも1時間は足止めを食らいます。 その時点で、お子さんの試験は「終了」です。 「ごめん、接触しちゃった」という親の一言で、これまでの努力が水の泡になる。そのリスクを背負ってまで、ハンドルを握る必要がありますか?
理由②:会場周辺は「送迎渋滞」のブラックホール
「早く出れば大丈夫だろう」 そう思うかもしれませんが、共通テストの規模を甘く見てはいけません。
その会場で受ける受験生が1,000人いたとして、そのうちの3割の親御さんが「車で送ろう」と考えたらどうなるでしょうか? 一気に300台の車が、たった一つの正門を目指して殺到します。
「降車渋滞」の恐ろしいメカニズム
これがただの渋滞と違うのは、「降車(乗り降り)」が発生する点です。 正門前で子供を降ろすために、車が完全に停車します。 「頑張ってね」「行ってきます」 荷物を下ろして、ドアを閉める。この動作に1台あたり最低でも10秒〜20秒かかります。
もし300台がこれを行えば、単純計算で数十分〜1時間以上のタイムロスが発生します。 先頭の車が動かないため、後ろの車列はピクリとも動きません。 これが**「送迎渋滞(降車渋滞)」**の正体です。
抜け道という名の「罠」
渋滞にハマった親御さんは、焦ってGoogleマップに出ている「抜け道(裏道)」に入ろうとします。 しかし、大学周辺の裏道はたいてい狭く、同じことを考えた車同士ですれ違いができなくなり、完全に立ち往生する「詰み」パターンが多発します。 こうなると、車から降りることもできず、時間だけが過ぎていく地獄を見ることになります。
また、当日は警察による交通規制が敷かれ、普段は曲がれる交差点が「進入禁止」や「右折禁止」になっていることも珍しくありません。
理由③:もし雪予報なら…「ノーマルタイヤ」は走る凶器
共通テスト(旧センター試験)の日は、なぜか雪が降るというジンクスがあります。 もし天気予報に雪マークがついた時、 「スタッドレスタイヤは持ってないけど、ゆっくり気をつけて走れば大丈夫だろう」 などと考えていませんか?
指導員として断言します。 「雪道をノーマルタイヤで走るのは、自殺行為であり、殺人未遂です」
あなたが気をつけても「もらい事故」は防げない
「自分は運転が上手いから」という過信は通用しません。雪道では、物理法則が全てです。 そして一番怖いのは、あなたがどれだけ慎重に運転していても、**「同じようにノーマルタイヤで突っ込んでくる周りの車」**を防げないことです。
坂道で登れなくなった車が道を塞ぎ、スリップした対向車が突っ込んでくる。 雪の日は、道路全体が「制御不能な鉄の塊」で溢れかえります。
電車なら「遅延証明」が出る
公共交通機関が雪で遅れた場合、試験開始時刻の繰り下げなどの救済措置が取られることが一般的です。 しかし、「自家用車で渋滞にハマった」「事故った」というのは、あくまで個人的な理由であり、遅刻は認められません。
リスクヘッジ(危機管理)の観点から見ても、雪の日こそ、車ではなく公共交通機関を選ぶべきなのです。
解決策:それでも送るなら…プロが教える「賢い送迎の裏ワザ」
公共交通機関がない地域にお住まいの方や、お子さんが怪我をしていてどうしても車が必要な場合もあるでしょう。 その場合は、以下の**「3つの鉄則」**を必ず守ってください。
鉄則①:正門を目指すな、1km手前で降ろせ
一番の混雑ポイントは「会場の正門前」です。ここには絶対に近づいてはいけません。 会場から徒歩10分〜15分(約1km)離れた、広い駐車場のあるコンビニや、混雑していない安全な道で車を停め、そこで降ろしてください。
「寒い中歩かせるなんて」と思うかもしれませんが、渋滞でイライラしながら車内に閉じ込められるより、冷たい空気を吸って歩いた方が、脳が活性化してリフレッシュできます。 「ラストワンマイルは自分の足で」。これが確実な到着を保証します。
鉄則②:「パーク&ライド」的発想
これが最強のリスク回避策です。 試験会場の最寄駅まで送るのではなく、**「自宅から最寄りの駅」や、「会場から2〜3駅離れた駅」**まで車で送り、そこから電車に乗せてください。
渋滞のリスクを最小限に抑えつつ、電車の確実性を利用できます。 親御さんは駅で「頑張って!」と送り出し、お子さんは電車の中で最後の単語チェックをする。 この形が、お互いに精神衛生上もっとも良いはずです。
鉄則③:Googleマップの活用と「別れ際」の決め事
当日はカーナビの到着予想時刻を信じてはいけません。 Googleマップの「交通状況」レイヤーを見て、道路が**「赤(渋滞)」**になっていないかリアルタイムで確認してください。
そして出発前に、お子さんとこう握っておいてください。 「もし渋滞にハマりそうになったら、すぐに車を降りて走るからね」 「その時は、荷物を持ってすぐに飛び出せる準備をしておいて」
この「プランB(緊急時の対応)」を共有しておくだけで、当日のパニックを防ぐことができます。
ただし、渋滞にはまって、車が停止している間に車から子供をおろすのは可な危険です。すり抜けてくるバイクと接触したり、降りた直後に別の車に轢かれてしまったり。子供をおろすときは、必ず車を路端に停車させ、落ち着いて周囲を確認させることを忘れずに指示してください。そこで事故を起こせば、これまでの苦労は全て水の泡、どころか最悪は入院や死亡事故にもつながりかねません。
この「プランB(緊急時の対応)」を共有しておくだけで、当日のパニックを防ぐことができます。
まとめ:最高のサポートは「無事に送り出す」こと
親御さんが当日にできる最大のサポート。 それは、高級車で快適に送ることでも、ギリギリまで車内で粘ることでもありません。
「何があっても、試験開始時間に間に合うように送り出すこと」 これに尽きます。
「車で送ってあげたい」という親心を、グッとこらえてください。 リスクを排除し、公共交通機関を利用する、あるいは少し離れた場所で降ろすという「勇気ある判断」こそが、お子さんへの一番のエールになります。
この週末、すべての受験生が実力を出し切れるよう、そして親御さんが無事にその背中を見送れるよう、陰ながら応援しています。 どうぞ、ご安全に。


