【最終章】免許取り消しの現実と復活への道。「取消処分者講習」の全貌と、飲酒運転の代償

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交通ルールその他

これまで2回にわたり、「初心者講習」について解説してきました。 「通知が来たらどう回避するか」「講習では何をするのか」。 これらはすべて、まだ免許という資格を手にしている人たちが、それを守るための話でした。

しかし、今回お話しするテーマは違います。 「取消処分者講習(とりけししょぶんしゃこうしゅう)」

この名前を聞いたことがありますか? 一般のドライバーなら、一生縁がない言葉かもしれません。しかし、度重なる違反や、たった一度の重大な過ち(飲酒運転や人身事故)によって、免許を剥奪された人たちが再び免許を取得するために必ず通らなければならない、重く、苦しい関門です。

前回お話しした初心者講習の教室は、まだどこか「チャラついた若者」や「運が悪かっただけと思っている人」の空気が漂っていました。 しかし、この「取消処分者講習」の教室は違います。 そこにいるのは、仕事や生活の基盤を失い、それでも家族のため、生活のために、どうしても免許を復活させなければならない……そんな**「背水の陣」**を敷いた大人たちが多いです。

初心者講習は、免許証が取り消されるための序章に過ぎません。そこで改心できなかった人がたどり着くのが、ここです。 シリーズ最終回となる今回は、免許取り消しの絶望的な現実と、そこから這い上がるための唯一の道である「取消処分者講習」の全貌について、徹底的に解説します。


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1. 「取消処分者講習」とは?

まず、大前提として知っておいていただきたいことがあります。 「お金を払って講習を受ければ、免許が返ってくるんでしょ?」 そう思っている方がいたら、それは違います。

取消処分者講習とは、過去に運転免許を取り消された人が、「もう一度免許試験を受ける資格」を得るためだけに受ける講習です。

これを受けたからといって、免許証は戻ってきません。 この講習を修了して、初めて「あなたはもう一度、教習所に通ったり、試験場で試験を受けたりしてもいいですよ」という許し(受験資格)が得られるだけなのです。 そこから先は、また数十万円を払って教習所に通い直すか、超難関の一発試験に挑むしかありません。まさに、ゼロからの……いいえ、マイナスからのスタートです。

「欠格期間」という重い鎖

免許が取り消されると、単に免許がなくなるだけでなく、**「欠格期間(けっかくきかん)」**というペナルティが課せられます。 これは、「あなたは危険だから、今後〇年間は免許を取ってはいけません」という禁止期間です。 違反の内容や回数によって、最短で1年、最長で10年にも及びます。

この欠格期間が終わらない限り、いくら講習を受けても、いくら教習所に行っても、免許を手にすることはできません。 取消処分者講習には「受講してから1年間」という有効期限があります。そのため、自分の欠格期間がいつ明けるのかを正確に把握し、そのタイミングに合わせて受講しなければならないのです。


2. 【徹底解説】受講までの手続きと予約の壁

「よし、心を入れ替えて頑張ろう」と決意しても、この講習を受けるまでには高いハードルがあります。 初心者講習のように「通知が来て、指定された日に行けばいい」という受動的なものではありません。すべて自分から動き、手続きを踏む必要があります。

【1】取消処分者講習の予約

まず、予約です。 これが非常に面倒です。多くの都道府県では、電話やインターネットでの予約を受け付けていません。 **「各都道府県の運転免許センターや試験場に、本人が直接行って予約する」**必要があります。

免許がないのに、交通の便が悪い免許センターまで行かなければならない。この時点で心が折れそうになりますが、これもペナルティの一つだと思ってください。 必ず本人が来場し、事前に講習日の指定を受けなければなりません。

予約受付時間と場所

場所は、お住まいの地域の運転免許センターや試験場です。 受付時間は平日の日中(例:月〜金の8:30〜16:00)に限られます。仕事をしている人は、予約のためだけに有給を取る必要があるでしょう。 事前に必ず、管轄の警察署やホームページで受付時間を確認してください。

予約時の携行品(忘れると予約できません)

予約に行くだけでも、以下の書類が必要です。

  1. 運転免許取消処分書:免許を取り上げられた時に渡された書類です。
  2. 身分証明書:住民票(本籍記載)、健康保険証(資格確認書)、マイナンバーカードなど。
  3. 仮運転免許証:もし持っていれば(普通免許再取得希望者で、仮免だけ先に取った場合など)。
  4. 写真:必要な場合があります。

【2】講習場所と当日の持ち物

予約が完了すると、指定された日時と場所(運転免許センター、または指定された自動車教習所)に行くことになります。

講習料金:31,200円(2026年1月現在)

高いですか? 高いですよね。 初心者講習の倍以上です。一般講習も飲酒講習も同額です。この金額を現金で用意する必要があります。

講習時に必要なもの

当日は以下のものを忘れないでください。一つでも忘れると、受講を拒否されることがあります。

  • 運転免許取消処分書(または拒否処分通知書など)
  • 本籍記載の住民票の写し(外国籍の方は国籍記載、コピー不可)
  • 身分証明書(マイナンバーカード、パスポート等)
  • 写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm、無帽・正面・上三分身・無背景、6ヶ月以内撮影)
  • 仮運転免許証(ある人のみ)
  • 眼鏡・コンタクト(実車指導もあります)
  • 筆記用具、印鑑
  • 講習料金(31,200円)

服装の注意点(超重要)

**「運転に適した服装と靴」**で来てください。 サンダル、ハイヒール、下駄、クロックス、そして和服などは厳禁です。二輪・原付の講習を受ける人は、長袖・長ズボン・手袋・ヘルメットが必要です。 「お客様」ではなく「処分を受ける立場」であることを忘れないでください。服装一つで受講を断られ、予約の取り直し(また平日に行く)になる人も実際にいます。


3. 講習の中身:一般講習と「飲酒講習」の決定的な違い

いよいよ講習の中身です。 取消処分者講習は、取り消しの理由によって**「一般講習」「飲酒講習」の2種類に分かれます。 どちらも2日間、合計13時間**の長丁場ですが、そのカリキュラムは大きく異なります。

<1> 一般講習(累積違反・事故など)

酒酔い・酒気帯び以外の理由(スピード違反の累積や、重大な事故など)で取り消しになった方が対象です。 原則として連続する2日間で行われます。

  • 1日目(7時間):
    • 適性検査:自分の性格や運転の癖をデータで突きつけられます。
    • 実車指導:教習所や試験場のコース、あるいは路上に出て実際に運転します。ここでは技術を教わるというより、「なぜ事故を起こしたのか」「自分の運転のどこが危険なのか」を徹底的に矯正されます。
    • 座学:道路交通法の再確認。
  • 2日目(6時間):
    • 危険予測ディスカッション:ドライブレコーダー映像などを見ながら、危険感受性を高めます。
    • 感想文:反省文に近いものです。

ここに来る受講者は、運転技術自体はある程度高い(ベテラン)ことが多いです。しかし、その「慣れ」や「過信」が事故を招いたことを、指導員は容赦なく指摘します。

<2> 飲酒講習(アルコール関連での取消)

ここが最も過酷です。 酒気帯び運転、酒酔い運転、あるいは飲酒運転による死傷事故などで取り消しになった方が対象です。 最大の特徴は、1日目と2日目の間に「約30日間」の空白期間があることです。

  • 1日目(7時間):
    • 呼気検査:実際に呼気検査機を使います。
    • AUDIT(オーディット):アルコール依存の疑いがないかを判定するスクリーニングテストを行います。
    • ブリーフ・インターベンション(1回目):AUDITの結果をもとに、指導員(場合によっては専門家)と面談し、断酒や節酒の目標を立てます。
    • 飲酒日記の作成指導:これが飲酒講習の肝です。

【重要】30日間の「飲酒日記」 1日目が終わっても、講習は終わりません。ここから約30日間、受講者は毎日「飲酒日記」をつける義務があります。 「いつ」「何を」「どれくらい飲んだか」、あるいは「飲みたいと思ったか」を記録し続けます。 自分の飲酒習慣を客観視し、いかにお酒に支配されていたかを自覚するための期間です。

  • 2日目(6時間):
    • 1日目から約30日後に実施されます。
    • 呼気検査:当然ですが、お酒が残っていたらアウトです。
    • ブリーフ・インターベンション(2回目):作成した飲酒日記をもとに、指導員とディスカッションを行います。「なぜあの時飲んでしまったのか」「これからどうコントロールするか」を話し合います。
    • ディスカッション:同じ過ちを犯した受講者同士で、飲酒運転の恐ろしさについて議論します。

飲酒講習の教室は、独特の重苦しさがあります。 「もう二度と、お酒で失敗したくない」。そんな悲痛な決意と、依存への恐怖が入り混じった空間です。指導員も、単なる運転技術ではなく、受講者の「心」と「生活習慣」に踏み込んで指導します。


4. 再取得へのロードマップと「前歴」の罠

長く苦しい講習を終えると、ようやく**「取消処分者講習終了証明書」**が交付されます。 これが、復活へのパスポートです。

講習後の流れと有効期限

この証明書を持って、免許センターに行けば、本免許試験(学科・技能)を受けることができます。 または、教習所に入校して、一から免許を取り直すことも可能です(この場合も、卒業検定後の本試験で証明書が必要になります)。

【注意】有効期限は1年間 この証明書の効力は、講習終了の翌日から1年間です。 もし1年以内に免許試験に合格できなければ、証明書はただの紙切れになり、もう一度31,200円と2日間をかけて講習を受け直さなければなりません。

ベストな受講タイミングは?

では、いつ受けるのが正解なのか。 欠格期間(免許が取れない期間)中でも、講習を受けること自体は可能です。 しかし、あまり早く受けすぎると、欠格期間が明ける前に証明書の期限(1年)が切れてしまうリスクがあります。

逆に、欠格期間が明けてから受講しようとすると、予約が取れずに1〜2ヶ月待たされ、その分免許取得が遅れてしまいます。 最も効率的なのは、**「欠格期間が明ける1〜2ヶ月前」**に受講することです。 そうすれば、欠格期間終了と同時に(あるいは直後に)免許試験を受けることができます。

恐ろしい「前歴」の罠

「よし、免許を取り直した!これで元通りだ!」 そう思ったら大間違いです。免許を取り直しても、あなたが過去に処分を受けたという事実は消えません。

**前歴(ぜんれき)**という制度があります。 過去3年以内に免許停止や取り消し処分を受けた回数がカウントされ、次の処分の基準が厳しくなる制度です。

  • 前歴0回の人: 6点で免停、15点で取り消し。
  • 前歴1回の人(取り消し明けの人): 4点で免停10点で取り消し

つまり、免許を取り直した直後は、たった4点(信号無視2回など)で、すぐに免停になってしまうのです。さらに10点でまた取り消しです。 これを「前歴の罠」と言います。

「前歴が消える」条件 処分が明けた日(欠格期間終了後)から、1年以上、無事故・無違反・無処分で過ごせば、点数計算上の前歴は「0回」に戻ります。 しかし、これはあくまで「点数計算上」の話です。 警察のデータからは、過去に処分を受けたという**「事実」**は消えません。

「一度リセットされたから大丈夫」ではありません。 一度ついた傷跡は、一生残るのです。


5. まとめ:二度とここに戻ってこないために

全3回にわたる「初心者講習から取消処分者講習まで」のシリーズ、いかがでしたでしょうか。

第1回では、講習を回避する賢い方法を。 第2回では、初心者講習での指導員の葛藤を。 そして今回の最終回では、免許制度の最深部にある、重く苦しい現実をお伝えしました。

取消処分者講習の受講者たちは、皆一様にこう言います。 「免許があることが、こんなにありがたいことだとは思わなかった」 車で通勤できること、家族を送り迎えできること、身分証明書として使えること。当たり前すぎて気づかなかった「日常」を失って初めて、その重みに気づくのです。

3万円のお金と、13時間の講習、そして数年間の欠格期間。 これだけの代償を払って、ようやくスタートラインに戻れるのが「免許取り消し」という処分です。

もし、あなたがまだ「初心者講習」の段階にいるなら、あるいはまだ違反をしていないなら、どうか今のうちに気づいてください。 ここ(取消処分者講習)に来てはいけません。 ここは、失ってしまった信用を取り戻すための、最後の、そして最も険しい場所なのですから。

今日からまた、ハンドルを握るときは背筋を伸ばしましょう。 あなたの免許証は、ただのカードではなく、社会からの「信頼の証」なのです。 どうか、ご安全に。

第1章 初心者講習の通知が来た人へ!地獄の「再試験」を回避して免許を守る唯一の方法

第2章 【初心運転者講習】具体的な実施内容と問題点を解説