【前編】自転車の飲酒運転で「車の免許」が180日停止。2025年は9ヶ月間で900人以上と急増

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交通ルールその他

「自転車でお酒を飲んで捕まっても、車の免許には関係ないでしょ?」 「赤切符って言っても、どうせ罰金払えば終わりじゃないの?」

もし、あなたがまだそう思っているなら、その認識は致命的です。今すぐ改めた方がいいでしょう。 交通安全教育の現場に身を置く人間として、はっきりとお伝えしておきます。

その「油断」が、あなたのドライバー人生を終わらせ、職さえも奪う可能性があります。

実は、昨年末に報じられたニュースにより、自転車の飲酒運転に対するペナルティの常識が根底から覆されました。自転車でお酒を飲んで運転した結果、自動車の運転免許が停止(免停)になった人が、2025年のたった9ヶ月間で約900人に急増したのです。

2026年は、5月までに自転車の「青切符」制度も始まります。自転車への監視の目は、かつてないほど厳しくなっています。 今回は、昨年末に大きな話題となった自転車飲酒運転の実態と、それが自動車免許に及ぼす甚大な影響について、徹底解説します。


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第1章:激変した現実――たった1年で「450倍」の検挙・処分

「少しくらいなら大丈夫だろう」「車じゃないから捕まらないだろう」。 そんな軽い気持ちが、取り返しのつかない事態を招いています。まずは、昨年末に明らかになった衝撃的なデータから見ていきましょう。

9ヶ月で896人! 桁違いの急増

2025年12月10日、読売新聞が報じた警察庁のデータは、多くのドライバーに衝撃を与えました。 2025年1月から9月までの間に、自転車の飲酒運転を理由に車の運転免許の停止処分を受けた人が、全国で**896人(暫定値)**に上ったのです。

この数字がいかに異常か、前年のデータと比較すると一目瞭然です。 前年同期(2024年1月〜9月)の処分者は、わずか2人でした。

つまり、たった1年で約450倍に急増したことになります。これは単なる「増加」ではなく、警察の運用の「次元が変わった」ことを意味します。もはや「運が悪かった」では済まされない確率で、処分が下されているのです。

あなたの街もターゲットに? 地域別処分者数

地域別に見ると、特に検挙・処分が多かったのは以下の地域です。

  • 大阪府:340人(全国最多)
  • 東京都:124人
  • 和歌山県:73人
  • 奈良県:66人

一方で、処分者が0人だった県も22県あり、地域によって運用にばらつきは見られます。しかし、これは「私の県は大丈夫」という安心材料にはなりません。 これだけ注目されれば、0人だった県でも取り締まりが強化される可能性が高いです。
都市部を中心に**「自転車の飲酒で車の免許を止める」**という運用が、スタンダードになりつつあります。この波が全国に波及するのは時間の問題と言えるでしょう。


第2章:なぜ「自転車」なのに「車の免許」が止まるのか?

ここが今回の記事の核心であり、多くの人が誤解しているポイントです。 「自転車には免許がないから、点数は付かないはずだ」 そう思っていませんか?

その通りです。自転車には免許制度がないため、車のような違反点数(青切符の点数など)は加算されません。 しかし、だからこそ**「点数制度ではない、別のルート」**で処分が下されるのです。

「危険性帯有者」という烙印

警察と公安委員会は、自転車の飲酒運転者を**「危険性帯有者(きけんせいたいゆうしゃ)」**として扱います。 これは道路交通法第103条に規定されている概念です。

【道路交通法 第103条(要約)】 自動車等の運転に支障を及ぼすおそれがある(著しく交通の危険を生じさせるおそれがある)と認められる者に対し、公安委員会は免許の停止、または取消しを行うことができる。

少し難しい言葉ですが、簡単に言えばこういうことです。 「自転車で酒を飲んで運転するような遵法精神のない人間は、車を運転させても同じように危険な行為をする可能性が高い」

このように判断されると、過去の違反点数がゼロであっても関係なく、**行政処分(免許停止)**が直接執行されます。

「赤切符」と「免停」のダブルパンチ

自転車の飲酒運転で検挙されると、以下の2つの制裁が同時に襲いかかります。

  1. 刑事処分(赤切符): 警察・検察・裁判所が管轄。「懲役」または「罰金(前科)」が決まります。
  2. 行政処分(公安委員会): 公安委員会が管轄。「車の運転免許停止」が決まります。

「罰金を払ったから許される」わけではありません。罰金の手続きとは別に、後日、忘れた頃に公安委員会から「免許停止処分書」が届くのです。


第3章:点数制度より重い? 「180日停止」の罠

私がこの件で最も警鐘を鳴らしたいのは、処分の**「重さ」「融通の利かなさ」**です。 自転車での処分は、通常の車の違反(点数累積による免停)よりも、ある意味で過酷な結果を招くことがあります。

いきなり「最大180日(6ヶ月)」が適用される

通常の免停は、累積点数に応じて30日、60日、90日……と期間が決まります。 しかし、自転車には点数がないため、公安委員会は「危険性帯有者」に対する処分の裁量権を行使します。

飲酒運転は極めて悪質であるため、多くのケースでこの条項の上限である**「180日間(6ヶ月)」**の停止処分が一発で下されています。 「ちょっとビールを飲んで自転車に乗っただけ」で、半年間、車のハンドルを握れなくなるのです。

「講習で短縮」できない

さらに恐ろしい事実があります。 通常の免停(点数によるもの)であれば、「停止処分者講習」を受けることで、期間を大幅に短縮(例:30日免停→1日)できる制度があります。

しかし、「危険性帯有者」としての処分の場合、地域や事案によっては短縮講習の対象外となるケースや、制度上受講が認められないケースが多々あります。

つまり、**「きっちり実数で半年間、車に乗れない」**という状況に陥る可能性が高いのです。

  • 通勤で車を使っている人
  • 仕事で営業車を運転する人
  • 家族の送迎が必要な人

これらの方にとって、「6ヶ月の運転禁止」は、実質的に**「失職」「生活崩壊」**を意味します。 自転車の飲酒運転は、それほどのリスクを背負ってまでやる価値のあることでしょうか?


第4章:2024年11月改正で厳罰化!

なぜ今、これほど厳しくなったのか。背景には法改正があります。

「酒気帯び」も完全にアウトになった2024年

2024年11月の法改正以前は、自転車の場合、酩酊状態の「酒酔い運転」のみが処罰対象でした。 しかし改正後は、**「酒気帯び運転」**にも明確な罰則が新設されました。

  • 酒気帯び運転(呼気0.15mg/L以上): 3年以下の懲役 または 50万円以下の罰金
    • 目安:ビール中瓶1本、サワー1〜2杯程度
  • 酒酔い運転(正常な運転ができない恐れ): 5年以下の懲役 または 100万円以下の罰金

これにより、警察官は「千鳥足でなくても、酒の臭いがすれば検挙できる」という強力な武器を手に入れました。これが検挙数急増の直接的な原因です。

提供者・同乗者も「同罪」

忘れてはならないのが、周辺者への責任追及です。

  • 自転車を提供した人
  • お酒を提供した店や人
  • 飲酒運転と知りながら同乗した人(二人乗り等)

これら全てが処罰の対象です。居酒屋で「自転車で来た」という客に酒を出し、その客が検挙されれば、店側も責任を問われます。「自転車だから」という甘えは、周りの人間をも犯罪者に仕立て上げてしまうのです。


ここまでは、自転車の飲酒運転がいかに「車の免許」にとって危険か、その法的な仕組みと現状について解説しました。 しかし、恐怖はこれだけではありません。

次回の【後編】では、さらに踏み込んだ内容をお届けします。

  • 実録ドキュメント: 実際に処分を受けた人の人生はどう狂ったのか?
  • 物理学的リスク: なぜ自転車の飲酒運転は、車以上に「死」に近いのか?
  • 2026年「青切符」の衝撃: 青切符導入で、なぜ「飲酒検挙」がさらに増えるのか?

(後編へ続く)