「そろそろ免許の更新時期だけど、今までと同じようにハガキが来たら警察署に行けばいいんだよね?」 「70歳を過ぎると、講習の予約が取れないって本当?」
70歳という節目を迎えて初めての免許更新、あるいは75歳を超えて認知機能検査が必要になる更新を控え、このような不安を感じている方も多いのではないでしょうか。 結論から申し上げますと、70歳以上の免許更新は、現役世代の頃とは手順が全く異なります。
いきなり免許センターに行っても、その場では更新できません。 何よりも重要なのは、**「ハガキが届く時期」と「予約のタイミング」**を正しく理解し、計画的に動くことです。ここを間違えると、「更新期間に間に合わない」「免許が失効してしまった」という最悪の事態になりかねません。
この記事では、複雑な70歳以上の更新手続きを、ハガキが届く瞬間から新しい免許証を手にするまで、時系列に沿った「完全ロードマップ」として解説します。 予約難民にならず、スムーズに更新を完了させるための知恵と、筆者が現場で見てきたトラブル事例も交えてお伝えします。ぜひ、ご自身のため、あるいはご高齢のご家族のために役立ててください。
1. 【最重要】ハガキは「2種類」届く!到着時期と役割の違い
70歳以上の更新手続きにおいて、最初の落とし穴は**「ハガキ」です。 これまでは「更新のお知らせ」が1通届くだけでしたが、70歳以上の方には時期をずらして2種類のハガキ**が届きます。 この2つの違いを理解していないと、「まだ更新のハガキが来ていないから大丈夫」と油断してしまい、スタートダッシュに遅れることになります。
ハガキ①:「高齢者講習のお知らせ」
- 到着時期: 免許証の有効期間満了日の約6ヶ月前
- 役割: 「更新手続きの前に、自動車教習所などで講習(75歳以上は検査も)を受けてください」という案内。
- アクション: 届いたら即開封し、すぐに予約の電話を入れること!
これが最も重要なハガキです。更新手続き(誕生日の前後1ヶ月)のずっと前、半年も前に届きます。「まだ半年もあるのか」と思ってはいけません。このハガキが届いた瞬間が、あなたの免許更新のスタート合図です。
ハガキ②:「運転免許証更新のお知らせ」
- 到着時期: 免許証の有効期間満了日の約3ヶ月前(誕生日の約1ヶ月前)
- 役割: 「講習が終わったら、この期間内に警察署か免許センターに来て更新手続きをしてください」という案内。
- アクション: 講習の修了証明書と合わせて、更新窓口へ持参する。
つまり、ハガキ①で「事前準備(講習)」を済ませ、ハガキ②が来たら「仕上げ(更新)」に行く、という2段構えになっているのです。ハガキ②が来てから慌てて講習の予約をしようとしても、手遅れになるケースが多発しています。
【注意点】住所変更の罠
ここで一つ、非常に重要な注意点があります。 「引越しをして住所が変わっているのに、警察署での住所変更手続きを忘れていませんか?」
郵便局の転送届を出していても、転送期間(1年)が過ぎていればハガキは届きません。また、転送不可の郵便物として扱われる場合もあります。 ハガキが届かないことは、更新忘れ(うっかり失効)の最大の原因です。 「そういえば住所変更していないかも」という方は、今すぐに最寄りの警察署で手続きを行ってください。
また、ハガキに頼りすぎず、ご自身でもカレンダーやスマートフォンのリマインダー機能を活用し、「〇月頃にハガキが来るはず」「誕生日の半年前になった」と意識しておくことが、自己防衛の第一歩です。
2. ハガキ①が届いたら即行動!「予約」がすべての鍵を握る
有効期間満了日の約6ヶ月前、手元に「高齢者講習のお知らせ(ハガキ①)」が届きました。 ここであなたが取るべき行動はただ一つ。 **「ハガキに記載されている教習所リストの上から順に電話をかけ、予約を取ること」**です。
なぜそんなに急ぐ必要があるのか?
現在、全国的に高齢者講習は大変混み合っています。 地域によっては、「予約が取れるのは3ヶ月先、4ヶ月先」ということがザラにあります。教習所は、通常の免許取得教習(特に春休みや夏休みなどの繁忙期)と並行して高齢者講習を行っているため、枠に限りがあるのです。
「まだ半年あるから来月電話しよう」とのんびり構えていると、いざ電話した時には**「更新期限までに予約の空きがありません」**と言われてしまうトラブルが後を絶ちません。ハガキが届いたその日が、予約の勝負所だと思ってください。
75歳以上の方の予約フロー
75歳以上(更新期間満了日時点の年齢)の方は、単なる講習だけでなく、**「認知機能検査」**を受ける必要があります。
- 認知機能検査の予約(必須)
- 高齢者講習の予約(認知機能検査の結果が出てから受講、または同日受講)
理想的なのは、「認知機能検査」と「高齢者講習」を同じ日に同じ場所でセットで受けることです。何度も教習所に足を運ぶのは負担だからです。 しかし、セット予約は人気が高く、すぐに埋まってしまいます。セットが無理なら、まずは認知機能検査だけでも先に予約を確保しましょう。
もし予約を忘れていて、期限ギリギリになったら?
「ハガキを放置していて、気づけば誕生日の1ヶ月前になってしまった。どこの教習所に電話しても満席だと言われた……」
このような絶望的な状況になっても、まだ諦めないでください。 ハガキには、各都道府県警察の**「高齢者講習相談窓口」や「運転免許本部」**の電話番号が記載されているはずです。 そこに電話をし、「予約が取れなくて更新に間に合わない」と相談してください。警察側で、キャンセルが出た枠や、緊急対応が可能な枠を案内してくれる場合があります。 ただし、これはあくまで最終手段であり、遠方の教習所を指定される可能性もあります。基本は「即予約」を心がけましょう。
3. いよいよ更新!誕生日の前後1ヶ月(更新期間)にやるべきこと
無事に予約が取れ、必要な講習や検査をすべて終えました。手元には「修了証明書」や「結果通知書」があります。 ここでようやく、従来の免許更新と同じ土俵に立つことができます。
「更新期間」の定義を再確認
免許の更新手続き(新しい免許証の発行)ができるのは、**誕生日の1ヶ月前から、誕生日の1ヶ月後までの「2ヶ月間」**です。 (例:4月1日生まれなら、3月1日〜5月1日まで)
この期間内に、管轄の警察署または運転免許センターへ出向いて手続きを行います。
手続きの前提条件
窓口に行くためには、以下のものがすべて手元に揃っていることが大前提です。
- 高齢者講習修了証明書
- 認知機能検査結果通知書(75歳以上)
- 運転技能検査適合証(対象者のみ)
これらがないと、窓口に行っても受付すらしてもらえません。「講習は受けたけど証明書を家に忘れた」という場合は、取りに帰ることになりますので十分注意してください。
【警告】有効期限を過ぎてしまったら(うっかり失効)
万が一、この2ヶ月間の更新期間を過ぎてしまった場合、どうなるのでしょうか? 「数日くらいなら許してもらえる」と思っていると、取り返しのつかないことになります。
- 有効期限から6ヶ月以内: 「うっかり失効」として救済措置があります。ただし、高齢者講習などの受講は必須です。講習を受けていれば、学科試験・技能試験免除で免許を再取得できます。とにかく諦めずに、すぐに免許センターへ問い合わせてください。
- 有効期限から6ヶ月〜1年: **「仮免許」**の状態での再取得となります。つまり、本免許の学科試験と技能試験を一から受け直すか、教習所に通い直す必要があります。高齢になってからの教習所通いや試験合格は、極めてハードルが高いです。実質的に、ここで運転を断念せざるをえない方が多いのが現実です。
- 有効期限から1年以上: 完全に失効します。救済措置はなく、免許を取りたいなら、初めて免許を取る若者と全く同じ手順(教習所入所からスタート)を踏まなければなりません。
免許証の有効期限は、ドライバーにとっての「命の期限」と言っても過言ではありません。常に把握しておきましょう。
4. 当日の持ち物と新料金(マイナ免許対応)チェックリスト
更新手続きに行く当日の持ち物を確認しましょう。忘れ物があると、出直すことになり、高齢の方にとっては大きな身体的負担となります。
必須の持ち物
- 運転免許証(現在のもの)
- 更新連絡ハガキ(ハガキ②)
- ※紛失していても更新は可能ですが、手続きに時間がかかる場合があります。
- 眼鏡・補聴器(使用している方)
- ※視力検査があります。高齢になると視力が変動しやすいため、合わなくなっている場合は事前に作り直しておくことをお勧めします。
- 更新手数料(現金)
高齢者特有の必須書類(忘れると更新できません!)
以下の書類は、該当する方は絶対に忘れないでください。
- 高齢者講習の修了証明書(70歳以上全員)
- 認知機能検査の結果通知書(75歳以上の方)
- または、認知症でないことを示す医師の診断書
- ※認知機能検査の詳しい解説はこちら
- 運転技能検査の適合証(結果通知書)
- (75歳以上の方で、過去3年以内に信号無視やスピード違反など一定の違反歴がある方のみ)
- ※運転技能検査の詳しい解説はこちら
更新手数料(新料金体系)
近年、マイナンバーカードと運転免許証の一体化に伴い、手数料の体系が変わっています。ご自身がどのパターンで更新するかを決めて、現金を準備しましょう。
- 免許証のみ発行(従来通り): 2,850円
- マイナ免許のみ発行(免許証返納): 2,100円
- 免許証とマイナ免許の2枚持ち: 2,950円
※その他、講習手数料などは既に教習所で支払っているはずですが、自治体によっては警察署での手続き時に支払うケースもあります。ハガキの記載をよく確認してください。
5. 「1日で済ませる」vs「事前予約」賢い更新戦略
70歳以上の更新の大変さは、**「3箇所に出向かなければならない」**という点にあります。
- 認知機能検査(教習所A)
- 高齢者講習(教習所A または B)
- 更新手続き(警察署 または 免許センター)
これらをバラバラの日程で行うのは、移動の手間もかかり大変です。 そこで、**「運転免許試験場(免許センター)で1日で全て終わらせる」**という方法を検討する方もいます。
免許センターでの「即日完結」の可能性とリスク
一部の都道府県の運転免許試験場では、朝から出向き、その場で認知機能検査を受け、合格ならそのまま高齢者講習を受け、最後に更新手続きをして新しい免許をもらって帰る、というワンストップサービスを行っている場合があります。
- メリット: 1日で全ての手続きが完了する。何度も出かける必要がない。
- デメリット:
- 予約が必要: 当日飛び込みで受けられる場所は減っています。結局予約が必要です。
- 朝が早い: 朝一番からの受付になることが多く、早起きが必要です。
- 待ち時間が長い: 検査と講習、更新手続きの間に待ち時間が発生し、半日〜一日仕事になります。体力的負担が大きいです。
- 更新期間の制約: この方法は「誕生日の前後1ヶ月」の期間内でしかできません。もし検査に不合格だった場合や、予約が取れなかった場合、更新期限切れのリスクが高まります。
筆者の推奨:基本は「早めの予約・別日受講」
私の経験上、おすすめするのは**「ハガキ①が届いたらすぐに地元の教習所を予約し、誕生日の前に講習・検査を済ませておくこと」**です。
免許更新期間(誕生日の1ヶ月前)に入った時点で、すでに手元に「修了証明書」がある状態にしておけば、あとは都合の良い日に警察署に行くだけです。 「1日で済ませよう」として後回しにし、予約が取れずに焦るよりも、**「前もって少しずつ済ませておく」**方が、精神的にも体力的にも余裕が持てます。
6. まとめ:運転は健康寿命を伸ばす!トラブルなく更新するために
70歳以上の免許更新は、確かにハードルが高いです。 予約の電話がつながらない、検査の内容が不安、場所が遠い……。
過去に私が対応させていただいたケースでも、実際に次のようなトラブルがありました。
- 「高齢者講習を半年前に受けたが、早すぎて受けたこと自体を忘れてしまった」
- 「当日警察署に行ったら、修了証明書を家のどこにしまったか分からず、更新できなかった」
- 「ハガキが来ていたのに、まだ大丈夫だと思って放置していたら、予約が取れず期限が切れてしまった」
正直に申し上げますと、このようなトラブルを起こしてしまう状態であれば、「免許の返納を検討される時期」に来ているのかもしれません。スケジュール管理や書類管理は、安全運転に必要な認知機能の一部だからです。
しかし一方で、**「運転を続けることが高齢者の健康寿命を延ばす」**というデータもあります。買い物に行き、友人に会い、社会と関わり続けるために、車は大切なパートナーです。
長く、安全に運転を続けていただくために。 まずはこの複雑な更新手続きを、**「後手後手」にならず「先手必勝」**でクリアしてください。 ハガキが届いたらすぐ予約。書類は決まった場所に保管する。 この一歩が、あなたのこれからのカーライフを守ります。


