「自転車の違反で青切符が切られるようになる」 このニュースを聞いて、「捕まったらどうなるんだろう?」「警察署に行かないといけないの?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
これまで自転車の違反に対する措置は、「赤切符(刑事罰)」か「指導警告(注意)」のほぼ二択でした。しかし、2026年5月まで(報道等では2026年4月頃)に導入される「青切符(反則金)」制度によって、その間を埋める新しい処分が始まります。
結論から言うと、この制度変更は**「手続きは早くて楽になるが、財布は痛くなる(逃げ得が許されない)」**という変化をもたらします。
この記事では、これまでの「赤切符」と新しい「青切符」の手続きの違いを、警察庁の資料に基づき、図解を交えてわかりやすく解説します。
1. これまでの「赤切符」地獄と、実態としての「逃げ得」
自転車の違反で警察官に呼び止められたとき、これまではどのような処分が待っていたのでしょうか。
赤切符=刑事手続きの重圧
これまでの制度では、悪質な違反に対して交付されるのは「赤切符(交通切符)」のみでした。これを受け取ると、あなたは単なる違反者ではなく、刑事事件の**「被疑者」**として扱われます。
- 出頭・取調べ: 後日、警察署へ出向き、取調べを受ける必要があります。
- 検察庁への送致: 書類が検察官に送られ、場合によっては検察庁への呼び出しもあります。
- 起訴・裁判: 検察官が起訴すれば裁判となり、有罪判決を受ければ罰金を納付します。
- 前科: たとえ罰金刑であっても、それは刑罰であり、いわゆる**「前科」**がつきます。
現場の実情と「逃げ得」
しかし、この手続きは警察官にとっても非常に手間がかかるものでした。軽微な違反一つ一つにこれだけの労力をかけるのは現実的ではなく、結果として**「指導警告(注意)」**で済ませることが多くなっていました。
これが、「自転車なら違反しても捕まらない」「注意されるだけで済む」という**「逃げ得」**の意識を生む原因となっていたのです。
2. 新導入「青切符」の流れ:お金を払えば全て終わる
新しく導入される「青切符(交通反則通告制度)」は、この状況を一変させます。
青切符=行政処分の手軽さ
青切符は、16歳以上の違反者に対し、**「反則金を払えば、刑事手続きを免除しますよ」**という制度です。
- 現場で完結: 違反現場で警察官から「青切符」と「納付書」を渡されます。
- 納付で終了: 銀行や郵便局で反則金を納付(仮納付)すれば、その時点で全ての手続きが完了します。警察署への出頭も、取調べもありません。
- 最大のメリット: 反則金の納付は刑罰ではないため、「前科」はつきません。
警察官も「切りやすく」なる
手続きが簡単になるのは、警察官にとっても同じです。これまで書類作成の手間から見逃さざるを得なかった違反も、これからはサクサクと青切符処理ができるようになります。 つまり、**「今までなら注意で済んでいた違反も、これからはキッチリ反則金を取られる」**ようになるのです。
3. 【比較図解】捕まってから終わるまでのフロー
ここで、これまでの「赤切符」と新しい「青切符」の手続きの違いを、図解で整理してみましょう。
以下の図は、警察庁の資料にある「青切符の導入前と導入後の違い」を示したものです。

導入前(赤枠):長い道のりと前科のリスク
- 検挙 → 出頭・取調べ → 検察官が起訴 → 裁判 → 有罪判決(罰金) → 前科がつく
これまでは、違反をするとこの長い「刑事手続き」のレールに乗せられていました。
導入後(青枠):迅速な処理と前科回避
- 検挙 → 青切符交付 → 反則金の納付 → 終了(前科なし)
新しい制度では、現場で青切符を受け取り、後日お金を払うだけ。非常にシンプルでスピーディな流れになります。 もし仮納付を忘れても、後日送られてくる通告書で納付すれば大丈夫です。ただし、それも無視し続けると、最終的には**刑事手続き(赤切符コース)**に移行してしまいます。
4. 勘違い注意!「赤切符」がなくなるわけではない
「これからは全部青切符になるから安心」というのは大きな間違いです。悪質で危険な違反は、これまで通り、あるいはそれ以上に厳しく**「赤切符」**で処理されます。
赤切符対象のまま残る違反
以下の違反は「反則行為(青切符)」には含まれず、即座に刑事手続きの対象となります。
- 酒酔い運転・酒気帯び運転
- 妨害運転(あおり運転)
- 携帯電話使用等(交通の危険を生じさせた場合)
- 違反により事故を起こした場合
これらは、「お金を払えば許してもらえる」レベルを超えた重大な違反です。青切符制度が始まっても、これらの違反に対する厳しさは変わりません。
まとめ:自転車も「責任ある車両」へ
今回の制度変更は、自転車を「気軽な乗り物」から「責任を伴う車両」へと位置づけ直すものです。
- 手続きは楽になる: 軽微な違反なら、面倒な取調べや前科のリスクから解放されます。
- 支払いは逃れられない: その代わり、違反の代償として「反則金」という金銭的な負担が確実に求められるようになります。
「捕まっても注意で終わる」という甘い考えは捨て、2026年の制度開始に向けて、今一度交通ルールを見直しておきましょう。


