運転免許の学科試験に挑戦!信号機の義務を上書きする特別な規制
道路を走行中、交差点に差し掛かったとき、前方の信号が赤色を示していたら、ドライバーは停止線で車を止めるのが絶対的なルールです。しかし、ごくまれに、信号の色に関わらず「進んでも良い」という特別な規制が存在します。
今回のテーマは、その特殊な規制を示す**「左折可」の標示板です。これは、信号機の信号に従う義務を上書きする特別なルールであり、その意味を正しく理解していないと、追突事故や、横断中の歩行者・自転車との接触事故**に直結する危険があります。
本記事では、「左折可」が持つ特殊な法的意味を明確にし、ドライバーが混乱しやすい「左折禁止」の標識や「左折優先」の誤解を解消。さらに、安全を確保するために必須となる巻き込み防止や内輪差を意識した左折の基本技術までを、網羅的に解説します。
1. 問題提起と回答:「左折可」標示板の特別な権限
まずは、信号機と特別な規制が衝突する、この問題を見てみましょう。

問題:「交差点を左折しようとしたところ、この標示板(左折可の青い矢印の標示板)があったため、前方の信号は赤色だったが、停止せずに左折した。」
さて、この内容は
⭕️ 正しい ❌ 誤り
答え:⭕️ 正しい
正解は ⭕️ 正しい です。
ご提示の「左折可」の標示板(白地に青の左向きの矢印)は、前方の信号が赤や黄であっても、常時左折が許されるという特別な規制を示すものです。
法的根拠:信号無視の義務の例外
道路交通法第7条は「信号機の信号等に従う義務」を定めていますが、「左折可」の標示板は、この信号に従わなければならない義務の例外となります(道路交通法施行令第5条第2項)。
つまり、「左折可」の規制がある交差点では、赤信号で止まらないことが正解となり、うっかり停止してしまうと、後続車からクラクションを鳴らされたり、追突されたりする危険性があるのです。
2. 基礎解説:「左折可」標示板の特別な意味
「左折可」の定義と法的分類
- 定義: 信号の色に関わらず、周りの交通に注意しながら常時左折が可能であることを示します。
- 法的分類: 厳密には道路標識ではなく、標示板に分類されますが、交通規制を示すものとして信号よりも優先される効力を持ちます。
常時左折可の特例が成立する条件
「左折可」の標示板は、どのような交差点にも設置されるわけではありません。この特例が設けられるのは、常時左折が可能な安全な形状の交差点に限られます。
- 設置条件の例: 左折を開始・終了する場所が片側2車線以上あり、かつ左折する場所に横断歩道がないなど、交差する道路の直進車と交差しない安全な車線配置がされていること。
危険性の警告:最優先される歩行者保護
「左折可」の標示板があっても、絶対に忘れてはならない義務があります。
信号機に従って横断している歩行者や自転車の通行を妨げてはいけない
これは、常時左折可ばかりに気を取られ、横断中の人との接触事故につながることを防ぐための最重要ルールです。左折が許可されていても、横断歩道上を横断中の歩行者や自転車がいた場合は、必ず一時停止して道を譲らなければなりません。
3. 混同しやすい標識の区別と左折の優先順位
混同しやすい標識の区別
- 一方通行との区別:

青地に白い矢印の「一方通行」標識は、進行方向のみを示します。この標識がある交差点でも、前方の信号が赤であれば停止しなければなりません。「左折可」とは全くの別物です。 - 「左折禁止」の示し方:

「左折禁止」という標識は厳密には存在しません。左折禁止を示すのは**「指定方向外進行禁止」**という標識です。この標識の中で、左方向の矢印がないものが左折を禁止しています。
左折の優先順位(「左折優先」の誤解)
法令上、「左折優先」という表現は存在しませんが、右折車には以下の義務が課せられています。
- 道路交通法第37条: 右折車は、交差点において直進しようとする車両等、および左折しようとする車両等の進行を妨害してはならない、と定められています。
この規定により、法的には**「直進車(優先)→左折車(優先)→右折車(注意義務あり)」の順で優先されるため、一般的に「左折優先」という言葉が使われます。しかし、左折時も、巻き込み防止や安全確認**は義務であり、優先だからと油断してはいけません。
4. 実地運転の応用:安全を確保する左折のコツと技術
「左折可」の交差点でも、通常の交差点でも、左折時に事故を防ぐための基本動作と技術は共通です。
左折動作の基本手順
- 合図と寄せ: 交差点の30m手前で左折の合図を出します。そして、後続のバイクや自転車を巻き込まないように、あらかじめできる限り道路の左端に寄せます(滑らかに寄せる)。
- 徐行: できる限り道路の交差点の左側端に沿って徐行しながら左折します。
- 注意: 前の車に続いて曲がる際は、歩行者の飛び出しなどで急停車する場合もあるため、必ず車間距離をとり、前の車の動きに注意しておきましょう。
巻き込み防止の技術(直接目視の重要性)
交差点での左折時、特に危険なのが巻き込み事故です。
- 対象: 左側を並走してくるバイクや自転車、そして歩行者です。
- 対策: ドアミラーやサイドミラーだけに頼らず、必ず直接目視(目視確認)して左後方を確かめながら曲がることが重要です。ミラーの死角に隠れている二輪車を見落とさないように徹底しましょう。
内輪差の意識と修正方法
左折時に車体が内側へ食い込む**「内輪差」**は、後輪が縁石や歩道に乗り上げる危険性を生み、巻き込み事故の要因にもなります。
- 内輪差の意識: 内輪差は、前輪よりも後輪が内側を通るズレのことで、車の大きさに比例して大きくなります。
- 修正の技術:
- 狭い道で曲がる際は徐行し、サイドミラーを若干下向きにして内側の後輪を確認しながら左折します。
- 縁石にぶつかりそうになったり、歩道に乗り上げそうになったりしたときは、無理をせず一旦停止し、後ろの車の状況を確認したうえで車を少しバックさせ、ハンドルを右に切り直して内輪差を調整し、再度左折しましょう。
5. まとめ
「左折可」の交差点では、赤信号でも止まらないことが正解となり、うっかり停止すると後続車に追突されるおそれがあるという、非常に特殊なルールが適用されます。
- 最優先の義務: 「左折可」であっても、横断する歩行者や自転車の通行を妨げてはならないという義務は最優先です。常に周囲の交通に十分注意しましょう。
- 安全確保: 左折動作の基本(30m手前での合図、左端への寄せ、徐行)を守り、内輪差と巻き込み防止のための直接目視を徹底することが、安全な左折には不可欠です。
この特殊なルールを正しく理解し、思いやりの気持ちを忘れずに周りの車の動きに十分注意することが、安全運転につながります。


