義務は譲ること!「追いつかれた車両の義務」違反で罰則?進路妨害を避ける5つの鉄則と罰則リスク

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学科試験問題集

運転免許の学科試験を思い出すと、多くのドライバーは「追い越す側」のルール(右側通行、二重追越し禁止など)に意識が集中しがちです。しかし、実は道路交通法には、**「追いつかれた側」**にも明確な法的義務が課されています。

走行中に後続車に追いつかれたとき、「なぜ自分が譲らなければならないのか」「無視したらどうなるのか」と疑問に感じたり、感情的に加速したりしていませんか?

道路交通法第27条の定める**「追いつかれた車両の義務」は、単なるマナーではなく、違反すれば反則金や違反点数が科せられる立派な交通ルールです。さらに、その違反が原因で「あおり運転」「妨害運転罪」**といった重大な事件に発展するリスクもはらんでいます。

本記事では、道路交通法第27条を徹底解説し、この義務が生じる厳密な条件から、違反時の罰則リスク、そして安全かつ円滑な交通を実現するための具体的な行動鉄則までを網羅的に解説します。


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1. 問題提起と回答:義務は「できるだけ左側に寄り、進路をゆずる」こと

まずは、今回のテーマの核となる問題を確認しましょう。

問題:「後続車に追い越されるときで、相手に追い越しのための十分な余地がないときは、できるだけ左側に寄り、進路をゆずるのがよい。」

さて、この内容は

⭕️ 正しい

❌ 誤り


答え:⭕️ 正しい

正解は ⭕️ 正しい です。

これは、道路交通法第27条2項に定められた**「追いつかれた車両の義務」**に基づくものです。追い越しのための十分な余地がない場合、先行車には後続車に進路を譲る義務が発生します。

義務の根拠:「交通の安全と円滑」

追いつかれた車両に加速禁止や進路譲渡の義務が生じる理由は、道路交通法第1条に定められた**「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資すること」**という、法律の目的に通じています。

速度の遅い車両が進路を妨害してしまう事態を防ぎ、道路交通全体の流れをスムーズにすることで、事故防止と円滑化が期待できるのです。


2. 基礎解説:「追いつかれた車両の義務」とは何か?

「追いつかれた車両の義務」は、道路交通法第27条によって規定されています。この条文には、主に二つの義務が含まれます。

(1)「追いつかれた車両」の定義

「追いつかれた車両」とは、道路を走行中に後続車よりも遅い速度で走行している先行車です。

また、「追いつかれた」とは、直前の車両等が急に停止したときにおいても追突することを避けることができるために必要な車間距離まで、後続車が接近した場合をいいます。

(2)二つの主な義務

① 加速禁止義務(妨害の禁止)

道路を走行するすべての車両は、最高速度が高い車両に追いつかれたとき、あるいは最高速度が同じか低い車両に追いつかれ、かつその車両より遅い速度で進行しようとするとき、その追いついた車両が追越しを終えるまで速度を増してはなりません

これは、追越しを受けている最中に加速し、追越しを妨害して並走状態となることを防ぐための義務です。

② 進路譲渡義務(円滑化の確保)

車両通行帯の設けられていない道路を通行する場合、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間に追越しに十分な余地がない場合は、できる限り左側端に寄って進路を譲らなければなりません

最高速度が同じか低い車両の場合も同様に、その車両よりも遅い速度で引き続き進行しようとするときは、進路を譲る義務が生じます。

(3)例外規定:乗合自動車等

路線バス、乗合バス、トロリーバスなどの乗合自動車等は、一定の運行系統や予定時刻割に従って運行されるため、「追いつかれた車両」には含まれず、上記の義務は生じません。

しかし、追いついてきた後続車が乗合自動車等であった場合、他の車両には乗合自動車等の追越しが終わるまで加速しない義務が生じます。


3. 重要解説:義務が生じる厳密な条件と対象

「追いつかれた車両の義務」が生じるかどうかは、後続車の種類や道路の状況によって厳密に定められています。

義務発生の条件(車両通行帯がない道路の場合)

追いつかれた車両に「加速禁止義務」や「進路譲渡義務」が生じるのは、以下の条件が揃った場合です。

条件内容
① 速度の差後続車(追いついた車両)よりも遅い速度で引き続き進行しようとするとき。
② 最高速度の差最高速度が高い車両に追いつかれた場合、または最高速度が同じか低い車両に追いつかれた場合。
③ 道路の余地(車両通行帯がない道路で)道路の中央との間に、後続車が右側部分にはみ出さずに追い越し又は追い抜くための十分な広さがないとき。

ここでいう**「最高速度」**とは、現実に走行している速度ではなく、法定で定められた最高速度(一般道路で自動車は時速60km/h、原動機付自転車は時速30km/hなど)を指します。

例:最高速度による義務発生の判断

先行車後続車最高速度義務の有無
原付(30km/h)自動車(60km/h)後続車の方が高い義務発生
自動車(40km/h走行)自動車(50km/h走行)同じ義務発生(先行車が遅い速度で進行)

進路譲渡義務の核心:十分な広さがないとき

進路譲渡義務が特に重要になるのは、**片側一車線の道路(車両通行帯がない道路)**です。

追いつかれた車両が左に寄る義務が発生するのは、後続車が道路の右側部分(中央線からはみ出して対向車線側)に出ないと追い越せないほど道路の広さがない場合です。

法定速度を守っていても、あまりに遅い速度で走り続けると、交通の円滑を妨げたとして義務違反となります。


4. 義務違反の反則金と罰則、重大なリスク

追いつかれた車両の義務違反は、軽微な違反と思われがちですが、道路交通法の目的に反する行為であり、明確な法的制裁の対象です。

(1)義務違反の反則金と違反点数

義務違反(進路妨害など)を犯した場合、交通反則通告制度の対象となり、違反点数1点が加算されます。

車種区分反則金
大型車7,000円
普通車/二輪車6,000円
小型特殊車/原動機付自転車5,000円

反則金を納付すれば刑罰を科されることはありませんが、違反点数が累積し、6点に達すると30日間の免許停止となります。特に、過去に行政処分を受けた前歴がある場合、わずか1点の違反でも免許停止の期間が大幅に延長されるため、十分に注意が必要です。

(2)追いつかれた車両の義務違反に関連した重大な罪

追いつかれた車両の義務を怠り、意図的な妨害と見なされると、より重い罪に問われる可能性があります。

① 妨害運転罪(あおり運転)

追越しを受けているにもかかわらず加速する、進路を譲らない、などの行為が**「妨害目的」**であると判断された場合、「妨害運転罪」として処罰されます。

  • 最低速度違反の悪用: 高速道路で、他の車両の通行を妨害する目的で法定最低速度(50km/h)を下まわる低速走行をした場合も、この罪が適用されます。
  • 罰則: 交通の危険を生じさせるおそれのある場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金、著しい危険を生じさせた場合は5年以下の懲役または100万円以下の罰金という、非常に厳しい罰則が適用されます。

② 危険運転致死傷罪

妨害目的の低速走行によって交通事故を引き起こし、相手を死傷させた場合は、**「危険運転致死傷罪」**に該当するおそれがあります。この場合、1年以上の有期懲役という極めて重い刑罰が科されます。


5. 実地応用:もし自分が追いつかれたら?安全確保のための5つの鉄則

道路を走行中に後続車に追いつかれた場合、感情的にならず、道路交通法と安全確保の観点から冷静に行動することが重要です。

鉄則①:感情的にならず、相手の追越しが終わるまで加速しない

後続車が車間距離を詰めてきた、パッシングやクラクションで威嚇してきたとしても、絶対に腹を立てて追越しを妨害してはいけません。加速してしまうと、事故を誘発するだけでなく、明確な義務違反となります。相手の追越しが終わるまで、速度を一定に保ちましょう。

鉄則②:左に寄せて譲る(十分な余地がない場合)

車両通行帯がない一般道路で、後続車が追い越すための余地がない場合は、できる限り道路の左側端に寄せて進路を譲らなければなりません

  • ただし、左側端に寄ることで危険が生じる場合(歩行者がいる、道路工事など)は、危険回避を最優先し、無理に寄せる必要はありません。安全な場所を見つけ次第、速やかに譲りましょう。

鉄則③:追越し車線では速やかに走行車線に戻る

車両通行帯が複数ある道路で「追越し車線」(左から数えて2番目以降の車線)を走り続けていると、低速・高速に関わらず**「車両通行帯違反」**となります。後続車に追いつかれた場合は、すみやかに走行車線である左側車線に車線変更しましょう。

鉄則④:譲る意思を明確に伝える

後続車に自分が「進路を譲る意思がある」ことを示すため、ウインカーハザードランプを活用しましょう。特に夜間や見通しの悪い場所では、意思表示が後続車の運転手の安心と安全な追越し判断につながります。

鉄則⑤:先行車が低速でも無理な追越しは避ける

前方を走る車があまりに低速度で、進路を譲る気配がない場合でも、無理に追い越そうとするのは危険です。

  • 違反区間: 追越し禁止区間や、追越しのための右側部分へのはみ出し禁止区間では、追い越した側が違反になります。
  • トラブル回避: 後続車に追いつかれた状況で先行車が妨害している場合、あえて自分が路肩に一時停止する、またはコンビニなどに立ち寄るなどの方法で距離を取り、トラブルから遠ざかることが賢明です。

6. まとめ:交通の「安全と円滑」のために

「追いつかれた車両の義務」は、運転における**「譲り合いの精神」を法的に具体化したものです。この義務を果たすことは、単に罰則を避けるためではなく、道路交通法が掲げる「交通の安全と円滑」**という大きな目的を達成するために不可欠です。

自分の安全だけでなく、道路の流れをスムーズに保つ責任が、すべてのドライバーに課せられています。追いつかれたことに感情的にならず、周囲の交通の流れを把握し、思いやりの心をもってハンドルを握ることが、義務違反や重大事故を防ぐ最良の策となります。

日々の運転で、この「譲る側の義務」を意識し、安全で円滑な道路交通に貢献しましょう。

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