導入:あなたは答えられる?学科試験のひっかけ問題
運転免許の学科試験では、よく似た標識や例外規定を問う「ひっかけ問題」が頻出します。
その一例が次の問題です。あなたは答えられますか?
問題

「この標識のある交差点で特定小型原動機付自転車が右折する場合、他の自動車と同様の方法(小回り)で右折しなければならない」
答え
×(バツ)
解説
この標識は「一般原動機付自転車の右折方法(小回り)」を示すものです。
つまり、対象は「一般原付(排気量50cc以下の原動機付自転車)」のみ。
一方で 特定原動機付自転車(電動キックボード等) には適用されません。
特定原付は標識の有無にかかわらず、交差点を右折する際は必ず 二段階右折 をしなければならないと法律で定められています。
特定原動機付自転車(特定小型原付)とは?

2023年7月の道路交通法改正で新設された区分が「特定小型原動機付自転車」です。
いわゆる 電動キックボード がこれに該当します。
特定小型原付の要件
- 車体の大きさ:長さ190cm以下、幅60cm以下
- 原動機:定格出力0.60kW以下の電動機
- 最高速度:20km/h以下
- 構造:オートマチック機構を持ち、走行中に最高速度を変更できない
- 灯火類:最高速度表示灯を備えている
必要な手続き
- ナンバープレートの取得
- 自賠責保険への加入
免許不要
運転免許は不要で、16歳以上であれば誰でも運転可能です。
この「免許不要」という特徴から利用者が急増していますが、交通ルールの理解不足による違反や事故も課題になっています。
二段階右折とは?
原付や特定原付に義務付けられている特殊な右折方法が「二段階右折」です。
二段階右折の手順

- 交差点手前で速度を落とし、左端の車線を直進
- 交差点を渡り切ったところで一時停止し、車体の向きを右に変える
- 信号が青になったら再び直進して交差道路へ進入
言い換えると、交差点を斜めに右折するのではなく、直進→転回→直進という二段階の動作で右折する方法です。
小回り右折との違い

- 小回り右折:四輪車や普通二輪と同じ方法。右折レーンや交差点中央に寄って右折する。
- 二段階右折:交差点を一度直進し、渡り切ってから方向転換して進む。
二段階右折が必要な車種
軽車両
自転車やリヤカーなど、人力で動く軽車両は二段階右折が必要です。
一般原動機付自転車(50cc以下)
片側3車線以上の交差点では二段階右折義務があります。
特定原付(電動キックボード等)
標識に関わらず、常に二段階右折をしなければなりません。
原付二種以上
排気量51cc以上〜125ccの原付二種や普通二輪は二段階右折不要。小回りで右折します。
二段階右折が必要な交差点の条件
- 片側3車線以上の道路
- 信号機や警察官による交通整理が行われている交差点
- 「二段階右折禁止(小回り)」の標識が出ていない場所
具体例
- T字路
三車線以上で右折したい場合は、交差点を直進し渡り切ってから方向転換。 - 左折専用レーンがある交差点
原付は左端の車線を走行するため、そのまま直進して交差点を渡り切り、信号に従って再び直進。
標識による違い
赤い標識「一般原付の右折方法(小回り)」

- 一般原付に「小回り右折」を指示する標識
- 特定原付は対象外。二段階右折が必要。
青い標識「一般原付の右折方法(二段階)」

- 一般原付は必ず二段階右折をすることを指示
- 特定原付は標識に関係なく、常に二段階右折
二段階右折の歴史と背景
- 1964年〜1986年までは、原付も普通二輪や自動車と同じように小回りで右折していました。
- しかし、多通行帯道路での右折時に事故が多発。
- 1986年の道路交通法改正で原付に二段階右折が義務付けられました。
近年では、電動キックボードなど新しいモビリティが普及。
これらも速度が遅く車体が小さいため、従来の原付と同じように二段階右折義務が課されています。
二段階右折(小回り禁止)がある交差点の特徴
二段階右折が禁止される交差点には、いくつか共通した特徴があります。そのひとつが 「3車線以上あるT字路」 です。
具体例:3車線以上あるT字路
- 右折路は存在するが、左折路がない → つまり片側だけが分岐している交差点
- 通常の十字路とは異なり、交差点内のスペースや信号配置が限られている
- そのため、原付が二段階右折をしようとすると 進行方向の交通を妨げやすく危険
なぜ小回りになるのか?
- 二段階右折は「一度直進して渡り切る」必要がある
- しかし、T字路では直進できる道路が存在しない場合がある
- この場合、二段階右折の手順自体が成立しないため、標識で「小回り右折」を強制するケースが多い
注意点
- 標識がある場合は必ず小回りで右折
- 標識がなければ、原則どおり三車線以上は二段階右折が必要
- 特定原付(電動キックボード)は標識の有無に関係なく 常に二段階右折 なので混同しないこと
二段階右折違反の罰則
- 反則金:5,000円(原付の場合)
- 違反点数:1点
- 特定原付は免許不要ですが、違反すれば運転者本人に責任が問われます。
実際には取り締まりよりも「事故防止」が目的であり、警察庁も利用者への啓発を強化しています。
まとめ
- 問題の答えは「×」
- 標識「小回り右折」は一般原付にのみ適用され、特定原付は常に二段階右折
- 特定原付(電動キックボード)は免許不要で気軽に乗れる一方、交通ルール遵守が重要
- 二段階右折は安全確保のために導入されたルールであり、違反すれば罰則もある
👉 特定原付を運転する人は「常に二段階右折」と覚えておけば安心です。


