問題
「走行中オーバーヒートしたときは、直ちにエンジンを止めて冷却水を補充する。」
答え
❌(バツ)
解説
走行中にオーバーヒートが起きたからといって、直ちにエンジンを止めたり、冷却水を補充したりするのは誤りです。
なぜなら、急にエンジンを止めると後続車との追突事故につながる危険があり、さらに高温のラジエーターをすぐに開けると熱湯が噴き出して大やけどを負う恐れがあるからです。
正しい対応は次のとおりです。
- 安全な場所に車を停める
- エンジンはすぐに止めず、かけたままにしてボンネットを開け、冷却を促す
- エンジンが冷えたのを確認してから冷却水を補充する
- 可能であればロードサービスや整備工場へ連絡する
オーバーヒートとは
オーバーヒートとは、エンジンが過度に熱を持ち、冷却が追いつかなくなる状態を指します。
現代のクルマの多くは「水冷方式」を採用しており、冷却水(クーラント)がエンジン内を循環して熱を吸収し、ラジエーターで冷やして再びエンジンに戻る仕組みです。
しかし、冷却水の不足や冷却装置の不具合などによりこのサイクルが崩れると、エンジン温度が異常に上昇し、最悪の場合はエンジンが焼き付いて動かなくなることもあります。
オーバーヒートの予兆
オーバーヒートは突然発生するように思われがちですが、実は前兆があります。ここでは代表的なものを3つ紹介します。
1. 水温計が高温を指し始める
もっともわかりやすいサインが水温計です。通常よりも針が「H(高温)」側に動いていたら要注意です。放置するとオーバーヒートに直結する恐れがあります。
2. 走行時の違和感
「スピードが出にくい」「エンジンの回転数が安定しない」などの違和感があれば冷却系統の不調の可能性があります。必ずしも原因がオーバーヒートとは限りませんが、注意して観察する必要があります。
3. エンジンからの異音や異臭
「キンキン」「キーキー」といった金属音や、甘い匂い(冷却水が漏れた匂い)が漂う場合も危険信号です。これらを無視すると、重大なトラブルにつながる恐れがあります。
👉 こうした初期症状に早めに気づけば、整備工場での点検・修理で大きな被害を防げます。
オーバーヒートの原因
オーバーヒートは、エンジンが熱を持ちすぎる場合と、冷却性能が低下する場合の大きく2つに分けられます。
エンジンが熱を持ちすぎる場合
- 長い上り坂を低いギアで走行
- 渋滞時のノロノロ運転
- 真夏のエアコン全開運転
これらの条件ではエンジンが高回転を維持したり、風が当たらずラジエーターが冷えにくくなり、温度が急上昇します。
冷却性能が低下する場合
- 冷却水の不足や漏れ
- 冷却水ポンプ(ウォーターポンプ)の不具合
- 冷却ファンが回らない
- サーモスタットの作動不良
- ベルトの緩みや切れ
さらに、エンジンオイルの不足や劣化も原因になります。エンジンオイルには潤滑だけでなく冷却の役割もあるため、性能が落ちるとエンジン内部に熱がこもり、オーバーヒートを招きます。
オーバーヒートを起こしたときの対処法
1. 安全な場所に停車する
まずは周囲の交通に配慮し、路肩や駐車スペースに車を止めます。高速道路の場合は無理に走り続けず、サービスエリアや非常駐車帯に停車しましょう。
2. エンジンはすぐに止めない
直ちにエンジンを止めると冷却水やオイルの循環が止まり、かえってエンジン内部が急激に加熱し、焼き付きの原因になります。しばらくアイドリング状態を維持しましょう。
3. ボンネットを開けて冷却する
エンジンルームを自然に冷やすことが重要です。ただし、高温になっているためボンネットを開ける際はやけどに注意してください。
4. 冷却ファンや冷却水漏れを確認する
- ファンが回っていない場合 → エンジンを停止して自然冷却
- 冷却水が漏れている場合 → 追加での走行は危険、ロードサービスを呼ぶ
5. 冷却後に水や冷却水を補充する
十分に冷えたことを確認してから、ラジエーターキャップを開けて冷却水を補充します。熱い状態で開けると蒸気や熱湯が噴き出し、大けがにつながります。
まとめ
- 学科試験では「直ちにエンジンを止めて冷却水を補充する」は ❌。
- 実際には「安全に停車 → エンジンを冷やす → 冷却水を補充」が正しい流れ。
- オーバーヒートには前兆があり、水温計・走行時の違和感・異音や異臭を見逃さないことが大切。
- 原因は冷却水不足や機械的な不具合、オイル劣化など多岐にわたる。
- 無理に走り続けず、早めに停車して整備工場に相談するのが最善。


