はじめに
二輪免許を取得するうえで、多くの教習生がつまずく課題のひとつが「スラローム」です。あなたは、この難関をクリアできる自信がありますか?
スラロームの通過タイム基準は以下のとおりです。
- 普通二輪(400cc以下):8秒以下
- 大型二輪(400cc超):7秒以下
この記事では、
「なかなかタイムが切れない」
「タイムは出ているけど、走りが安定しない」
「うまくできている実感がない」
そんな方に向けて、スラロームの具体的なコツをわかりやすく解説していきます。
ご紹介するポイントをすべて意識できれば、タイムは必ずクリアできます。
それでもタイムが切れない場合は、まだ何かが足りないはず。
ぜひ、何度でも読み返してご自身の課題を見つけてください。
スラロームとは
スラロームの正式名称は「連続進路転換コース」。その名のとおり、直線上に設置されたパイロン(障害物)を左右に進路転換しながら回避していく課題です。
教習所にある数ある課題の中でも、唯一“車体をバンクさせて通過する”という特性を持ち、タイムとバランスの両方が求められる高度な技術が必要です。
スラロームのレイアウト

コース全長は27メートル。4.5メートル間隔で設置された大きなパイロン(ロードコーン)を左右交互に回避しながら進む、いわゆる「ジグザグ走行」が求められます。
スラロームを走行する際のポイント
- ギアはセカンドを使用(※上級者やプロレベルではローギアの方が速いとされることもあります)
- クラッチは使わず、ギアは繋いだまま(半クラ不要)
- アクセル操作でリズムを刻みながらテンポよく進行
- 原則ブレーキは使いませんが、どうしても必要な場合はリアブレーキを軽く活用
スムーズな通過の鍵は「機械操作」と「車体のリズム感」の両立。最初は難しく感じるかもしれませんが、理屈が分かると一気に上達するポイントです。
スラローム上達のための3ステップ練習法
スラロームは、ただ速く通過するだけでなく、「安全かつ安定して」コーンを避けられる技術が求められます。いきなり速さを求めるのではなく、段階的にスキルを高めていくのが上達の近道です。以下の3ステップで、確実に上達を目指しましょう。
◆【STEP1】基本操作をマスターする「ハンドルワークだけで通過」
まずは、スラロームの基礎である「バランス」と「車体の倒し方」を身につけましょう。
- 使用ギアはセカンド固定。この段階ではクラッチもアクセルも操作しません。
- 速度は自然な惰性(エンジンブレーキ)に任せて、ハンドルと車体の傾き(バンク)だけでコントロール。
- 目的は「コーンに接触せず、リズミカルにジグザグ走行をする」ことです。
💡転倒防止の注意点:
コーンに当たりそうになってもブレーキは使わないでください!
特に前輪ブレーキをかけると高確率で転倒します。
迷ったら、あえて“ボーリングのように”コーンを弾き飛ばした方が安全です。
📍このステップの合格タイム目安:
- 普通二輪:約10秒
- 大型二輪:約9秒
この段階で「コーンに触れずに通過できる」ようになったら、次のステップへ進みましょう。
◆【STEP2】アクセルを“部分的に”使ってタイム短縮
基礎が身についたら、次は「タイムの意識」と「加速操作」を段階的に取り入れていきます。
- クラッチは引き続き使わず、ギアはつないだままセカンド固定。
- この段階ではアクセルは2か所だけ使います。
- 入口: やや勢いをつけてスムーズに進入
- 出口:約4m残して加速しながら抜ける
この「入口+出口」だけでも、タイムは1秒程度短縮できるはずです。
📍タイムの目安(STEP2段階):
- 普通二輪:約9秒
- 大型二輪:約8秒
◆【STEP3】通過基準タイムをクリアする「全体で加速&リズムキープ」
ここからが本番。合格タイムを安定して切るための“完成型”を目指しましょう。
- ポイントはコーン間の全体的なアクセルワーク。
- ただし、アクセルを開けすぎると暴走&バランス崩壊の危険あり!
→ 丁寧に・優しく・滑らかに使いましょう。
🚦アクセルの使い方のイメージ:
- 赤矢印の位置で軽くアクセルを開けて前に出す
- 緑矢印の位置でアクセルを戻し、車体を倒して旋回
全体を“リズムよく走る”ことで自然とタイムは縮まります。
✅このステップでようやく「安定してタイムを切れる状態」に到達します。
タイムだけにこだわるのではなく、安全・スムーズ・リズミカルを意識しましょう。
🔍補足:図解について
図2では、アクセルを入れるタイミング(赤矢印)と戻すタイミング(緑矢印)を視覚的に示しています。


スラロームが苦手な人の共通点と改善のヒント
スラロームでうまくいかない人には、いくつかの共通した“癖”があります。それは決して技術の不足だけではなく、体の使い方や意識の持ち方にも原因があります。以下に挙げるポイントを意識することで、確実に安定した走行ができるようになります。
【1】腕が伸びている・力が入っている
スラロームに限らず、腕をピンと伸ばして力が入っている人は、まず上達が難しいです。
「バイクは傾ければ曲がる」とよく言われますが、実際には傾けると自然にハンドルが切れようとすることで旋回が成立しています。
ところが、腕に力が入ってハンドルを“押さえつけて”しまうと、その自然な動きを阻害してしまい、バイクはうまく旋回できません。
腕に力が入るのは無意識の行動ですので、意識して力を抜くことが大切です。
✅腕の力を抜くコツ
「一本橋」の攻略法でも紹介しましたが、腕の力を抜くには「肘を下に曲げ、前傾姿勢を取る」ことがポイントです。
ただ肘を曲げるだけでなく、「下に曲げる」ことを意識してください。すると驚くほどスムーズにハンドル操作ができるようになります。ぜひお試しください。
📎関連記事:» 一本橋攻略法|苦手克服!成功率アップの秘訣
【2】ニーグリップが甘い
バイクは“ただ座っているだけ”ではうまくコントロールできません。
スラロームの旋回は、本来腕ではなく膝(ニーグリップ)で行うものです。
初心者が腕に力を入れてしまう原因の多くが、ニーグリップの甘さにあります。膝が開くと、どうしても腕に頼ってしまい、その結果バランスを崩します。
初めのうちは無意識にグリップするのが難しいため、意識的に「膝を締める」習慣を身につけてください。
【3】視点が近すぎる
スラロームでは、「視線の位置」がコース取りを大きく左右します。
図3でも紹介しているように、コーンのギリギリを通るラインが理想です。ですが、そこを**“見ようとする”のではなく、“感じる”こと**が大切です。
基本的に視線は「進行方向の1つ先」を見るのが鉄則。
目の前ばかりを見ていると、次の操作が遅れ、結果としてタイムにも悪影響が出てしまいます。
✅コツ:
「目線は遠く、意識は手前」に置くのが理想です。
【4】アクセルを開けるタイミングがズレている
アクセル操作には、以下のように重要な3つの効果があります。
- 加速によるタイム短縮
- 一定のリズムで走るためのテンポ維持
- 傾いた車体を起こす“復元力”
ところが、タイミングがずれるとその効果が逆効果となり、リズムが崩れ、コースアウトやタイムオーバーの原因になります。
特に注意したいのは、コーンに近づいた時点でアクセルを開けてしまうケース。
この場合、まだ旋回途中なのに車体が起き上がってしまい、次のコーンを避けきれなくなります。
✅アクセルONのベストタイミング:
前輪・後輪ともにコーンの間に入った「赤矢印」の位置が目安です。
「テンポよく・タイミングよく・一定に」アクセルを開けられるよう、繰り返し練習しましょう。
【5】とにかく怖い!
スラロームが苦手な人の多くは、技術よりもまず「恐怖心」が壁になっています。
恐怖にはいくつか種類があり、それぞれに克服のヒントがあります。
❶ 傾きが怖い
バイクは傾けることで曲がりますが、怖がるあまり傾けられない方が多いです。
でも実は、前に進む力(加速)があれば、そう簡単には転倒しません。
まずは**ハンドル操作だけで通過できるようになったら、次に「膝で傾ける意識」**を持ちましょう。
❷ 速度が怖い
速度に対する恐怖がある場合は、アクセルを少しずつ使う練習から始めましょう。
“慣れ”が一番の薬です。
❸ ロードコンが迫ってくるのが怖い
恐怖を感じると、人は無意識にその対象を“じっと見てしまう”ものです。
すると、逆に吸い寄せられるように接触してしまいます。
意識的に目先のコーンを見ないようにして、危ないと感じてもブレーキは使わず、いざとなったらコーンを弾いてしまう勇気を持ってください。
✅最後に:恐怖を乗り越えた先に技術が身につく
誰でも初めてのことは怖いものです。
しかし、その恐怖を乗り越えたときにこそ、成長があります。
スラロームに限らず、バイクの運転は**「気持ちに打ち勝つこと」が上達への最大の近道**です。
最初は怖くて当たり前。でも、あえて一歩踏み出してみることで、驚くほど世界が広がるはずです。
あなたがその“殻”を破った瞬間、タイムも、安定感も、一気にレベルアップすることでしょう。
おわりに
スラロームって、本当に難しいですよね。でも、無事に通過できたときや、タイムをクリアできた瞬間には、それ以上の達成感や感動が待っています。
世の中には、スラロームを3秒台で走り抜けるライダーもいます(ちなみに私は4秒くらいがやっとです)。同じバイクに乗り、同じ人間なのに、どうしてこんなに差がつくのか……。でも、そこがバイクの奥深くて面白いところなのかもしれません。
「上には上がいる」とはよく言いますが、だからこそ、今よりもう一歩先を目指す楽しさがあるのです。すでにスラロームが得意な方も、ぜひさらなる高みを目指してチャレンジしてみてください。